第5話 〜構造〜
さらによく観察してみましょう。
対流を起こして、盛んに上昇下降を繰り返している味噌の粒の流れは、一つではありません。まるで、たくさんの入道雲がいっせいに湧いて、盛り上がってきたように見えませんか。
上昇下降を繰り返している同じような盛り上がりが、お椀の中にたくさん観察できますが、特別に大きいものも、特別に小さいものもあまりありません。おおよそは、みんな同じぐらいの大きさの盛り上がりになっているでしょう。
これが、対流で生じる「ベルナール・セル」という「構造」です。具のない味噌汁で理想的な状態では、この盛り上がりが隙間なく連なって、蜂の巣のような六角形の構造をとります。
この現象を「散逸構造」として提唱したロシアのイリヤ・プリゴジンは、1977年に「ノーベル化学賞」を受賞しています。
味噌汁の中には、ノーベル賞へ結びつくような現象があるのです。
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