第2話 〜茶色の秘密〜


 それでは、自分のうちにある味噌をよく観察してみましょう。

 味噌は、日本の地方ごとにいろいろな種類のものが作られています。台所にある味噌が、黒に近いほど濃い茶色の人もいれば、白っぽく薄い茶色の人もいると思います。材料の違い、保存期間の違いによって、色は変わっていくのです。

 みなさんの家がどの地方にあるかはわからないので、材料の違いによる色の多様性は考えないことにします。


 その一方で、どの材料を使った味噌でも、保存期間が長くなるほど色が濃くなっていく現象は必ず起きている化学反応です。これを「メイラード反応」といいます。身近に、この現象は多く観察されます。

 この反応は、常温ではゆっくりですが、加熱することにより一気に進みます。

 したがって、味噌は発酵の期間を通じてゆっくりと色が濃くなりますが、コーヒー豆は焙煎によって一気に色が変わります。焙煎したコーヒー豆の色は濃いので、焦げて炭になるという「炭化」と混同されて観察されているかもしれません。しかし、これは別の反応です。

 身近なところで、もう一つ例をあげましょう。ごはんのおこげがきつね色になって美味しそうなのも、この反応です。しかし、加熱を続けると炭化し、香ばしいおこげから黒い焦げになってしまうのです。


 このように、食べ物は、メイラード反応により美味しそうに見えるようになったり、良い香りを発生させることがあります。

 味噌の場合、メイラード反応が進み、茶色く色が濃くなったものほど体によいと判っています*。


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※参考文献 渡邊敦光「お味噌の効能」『日本醸造協会誌』105巻11号、2010年11月15日。

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