第4話

 翌日、目が覚めて、昨日の夜寝る前に見ていた光景と同じものを見て、安堵した。

 本当に過去に戻れていることを。

 まだ彼女にも、家族にも会えるということを。


 とりあえず、布団から出て時計を見ると朝の8時だったので、デートの準備をしようと動き始めた。

 と言っても、準備自体は以前から用意してあった記念日用のプレゼントと、他には普段外出する際に持ち歩くものをウエストポーチに入れて、着替えなどをするだけなので、すぐに済んだ。

 準備が終わり、少し早いが待ち合わせ場所で待とうと家を出た。



 待ち合わせの駅に着いたのは、待ち合わせの時間の30分前であった。

 電車の時刻表を見て、おそらく彼女が来るまであと20分ほどはあると思われたので、少し時間をつぶそうと携帯を開くと、そのタイミングで彼女からメッセージが届いた。

 彼女は、僕が思っていた電車に乗っているようなので、それまで彼女とメッセージのやり取りをしていると、間もなく電車が駅に着く時間になっていたようで、彼女からのメッセージが一度途切れた。

 

 冬も間近ということで、かなり冷え込んできていたので、手も冷えており、彼女が来るまでに何か温かい飲み物を買っておこうと、近くのコンビニに入り、ホットコーヒーと、彼女用にホットココアを買い、コンビニを出て携帯を開くと彼女から、


〈駅に着いたよ、改札出たとこ!〉


 と連絡が来ていたので、


〈駅近くのコンビニだよ、そのままそこにいてくれる? そっちに向かうよ〉


 と返信をして、改札に小走りで改札に向かった。


 改札の辺りまで着き、周りを見渡していると、少し離れたところに彼女はいた。

 記憶にある彼女よりも少し幼い雰囲気の彼女で、学生時代のそのままの彼女がいた。


「ごめん、お待たせ……今日も凄く可愛いね、見惚れちゃったよ」


 そう言うと、少し照れたように、はにかんで、


「待ってないよ、そっちこそ、かっこいいよ」


 久しくしていなかったやり取りをして、お互いに少し照れながら、アイスアリーナ行きのバスに乗って、ちょうど座席が並んで空いていたので、そこへ座った。

 そこで、先ほど買ったココアのことを思い出したので渡すと、とても嬉しそうに受け取って、感謝の言葉を伝えてきてくれた。

 それからは、約30分バスに揺られながら、友達のことや、最近あったおかしなことを話していた。



 アイスアリーナに到着して、バスから降り、建物の中に入った。

 

「じゃあ、少し準備してくる。スケートリンクで待ってるね」


 彼女にそう告げて、スケート靴に履き替え、更衣室のロッカーに荷物を入れてスケートリンクで待っていると、初めてでスケート靴に慣れないようで、少しおぼつかない足取りで、彼女が出てきた。


 自分は何度か友人と来ていたこともあり、スケート靴にも慣れていたので、彼女のもとに近付き、手を取ってスケートリンクに入ることにした。


「滑らないよう気を付けて」


 彼女の手を取りながら先にリンクに入り、彼女がリンクに入るのを手伝い、それからしばらく氷上を二人で滑りながら、遊んでいた。



 しばらく遊んでいると、リンクの清掃時間になり、一度上がることになった。

 時間もちょうど昼時であったので、昼食を食べようということで、休憩所に行くと、彼女が弁当を作ってきてくれていたらしく、それを食べてしばらく話していた。

 

 しばらく話をしていると、リンクの準備が出来たらしく放送が流れてきたので、再びリンクへと戻り、そのまま閉館時間まで休憩を時々挟みながら、遊んだ。



 帰りのバスの中で、


「スケート初めてだったけど、楽しかった! また来たいね!」


 と、彼女も言ってくれたので、またいつか来ようと話をしながら、バスに揺られていた。



 バスが駅に着き、もう別れる時間か……と寂しく思ったが、時間は仕方ないことで、帰るのが遅くなって彼女が危ない目に合ってしまったら悔やみきれないので、そこで次の電車が来るのを待って別れることにした。

 次の電車が来るまでまだしばらく時間はあったので、駅に隣接しているカフェに移り、今日のことなどを話していた。


 今日の間、ずっと渡すタイミングを計っていたが、プレゼントを渡せるのは今しかないと思い、彼女にプレゼントを渡した。


 きっと、僕の顔は赤くなっていて、緊張で無愛想になっていただろう。

 それでも、彼女は嬉しそうに受け取ってくれて、彼女もプレゼントを用意してくれていたらしく、彼女からプレゼントをもらった。

 僕も彼女も顔を真っ赤にして、それでも幸せな顔をしていた。



「それじゃあ、また月曜日に学校で」

 

 電車が来て、名残惜しく思いながらも、彼女を改札まで送ったところで、彼女と別れの挨拶をしていた。


「うん、プレゼント、ありがとね! 凄く嬉しかった!」


 そういう彼女の首元には、僕が渡したネックレスが、それを嬉しく思いながら彼女を見ている僕の手は、彼女が頑張って編んだという手袋があった。


「こちらこそ、手袋ありがとう、大事に使うよ」


 そう言って、最後に彼女にキスをして、彼女からもキスをされて、僕と彼女はそれぞれ帰り道に着いた。

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もう一度、あの時を かんた @rinkan

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