チキンな俺はチキンになってキッチンでファイッ!

@tori_mmm

チキンは資金0円で痙攣、さよなら現世。

 俺の名前は酉野亮太郎とりのすけたろう。みんなからはチキン野郎と馬鹿にされている一文無しだ。

 一文無しがどういう状況かわかるだろうか、そう……手元に1円もないのだ。高校からおこづかいはなしよ! っとかーちゃんから言われ続けて早一年。

 高校デビュー初日から俺の財布はすっからかんとなった。カツアゲくらったなんて言わせないで。

 最初にも言ったが、チキンな俺がバイトなんてできるはずがない。面接って言葉を聞くだけで背筋がゾッとする。

 

「でもこのままじゃ、何もできないし何して生きろと……」


 勉強しろ。そんなことはわかってる。

 でも、勉強が出来ても面接、受験が上手くいかない時点で無意味な気がする。

 わかってますよ。内気でネガティブで根性なしで、本番に弱い性格をなんとかしようって思ったことは何回もありますよ。

 

「今日も帰ったら、ベッドに飛び込んでそのまま1日を終えるんだろなー」


 足元に落ちている小石を軽く蹴る。

 小石は細いアスファルトを転がり、歩道から車道へ呆気なく落ちる。

 今のは俺の運動神経が悪いからじゃない、石ころの形が悪かっただけだ。

 毎日登下校中に石ころを蹴って帰るわけだが、毎回毎回すぐ車道側に転がっていく。石ころから恨みを買ってるんじゃないかと思うくらいだ。


 ため息をついている俺のそばを、一台のトラックが走る。

 どれだけ速度出してたのか疑問に思うくらいの風が俺の髪の毛を掻っ攫っていく。


「!!?」


 それと同時に、俺の額に何かが直撃した音がした。

 当たった部分の感触からわかる、堅くてところどころ角張っている。

 薄い灰色をしたそれは、俺の頭を跳ね飛ばしたあと、空へ空へと、高く飛び上がって行った。


 トラックのタイヤに挟まって跳ね飛ばされたのか、そんなことはどうだっていい。


 そんなに蹴飛ばされるのが嫌なら最初から言ってくれ――


 上に上に飛んでいく石ころと共に、上に飛び立っていく俺の意識。

 下には、横たわったまま額から血を流し、ビクンビクンと痙攣している俺の姿があった。

 

 そうだ、何も見なかったことにしよう。

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