第13話 脱出

「ここは……どこだ?」


 目を覚ますと、見知らない天井……でもない天井が視界に入った。

 きっと、コロニー内のどこかの部屋だろう。


「ということは、あの後、ここまで運ばれたのか」


 ルーヴィルのダンジョンコアを倒した後、疲れ切った俺はすぐに倒れたはずだ。


 つまり、エルノアが運んでくれたのだろう。


「お目覚めのようですね、クロス」

「その声は!?」


 声のする方に顔を向ける。

 そこには……全身銀色の耳がエルフみたいに長い女性がいた。


「ぎゃあああああああ!」


 俺の悲鳴が、部屋に響き渡る。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「失礼ですね、私の姿を見て叫ぶなんて」

「誰でも、全身銀色の人間に起こされたら驚くわ!」

「はぁ~。あなたには、この色の良さが分からなんですね」

「分かってたまるか! さっさと肌の色をなんとかしてくれ、エルノア」

「……分かりました。あなたの頼みを聞いてあげましょう」


 全身銀色の女性の正体は、エルノアのヒューマノイドだ。

 ヒューマノイドは色んな肌色を設定できるが、エルノアは銀色が好きなので、その色にしていたようだ。


 それからしばらくすると。


「これでどうでしょうか?」

「やればできるじゃん。ってなんで全裸なの!?」

「あら、コレハ失礼シマシタ」

「棒読みなのがムカつく」


 エルノアにからかわれつつも、ヒューマノイドの調整が終わったようだ。


「調整が済みましたよ。今度こそどうでしょうか?」

「お、おう……綺麗だな」


 銀色の美しい長い髪に、エルフのような長い耳。

 そこには、誰が見ても美人と思われる女性がいた。


「冗談の一つや二つ、言ってくれることを期待していたのですが、まさかの反応に返す言葉が思いつきません」


 ふんって感じでそっぽを向くが、髪の隙間から、頬の色が赤くなっているのが見えた。


「おやおや、エルノアさん。まさか照れてるんですか?」

「クロスの方こそ、顔が真っ赤ですよ」

「そんな訳……あ、顔が熱い」


 まさかエルノアを褒めただけで、俺の顔がここまで熱くなるとは。


 つかなんだ、この微妙な雰囲気は。

 凄いドキドキするんだが。


「まぁ、あなたの褒め言葉を素直に受け取っておきましょう」

「……そうしてくれ」

「ところで、身体の傷は癒えてますか?」

「ああ、痛みは感じないな」


 痛みどころか、疲れているところも感じない。


「メディカルルームで対応して正解でしたね」

「メディカルルーム? そんなものがあるのか?」

「ここ、実験区には私のヒューマノイドが保管してあったメンテナンスルームの他に、メディカルルームがあります。ここの設備や施設がまだ使えたので、クロスをメディカルルームの中で回復させました」

「そうか……ありがとな、エルノア」

「いえ、これぐらい……」


 そう言ったエルノアから、なにか緊張している気配を感じる。


「なにか言いたいことがあるんだろ?」

「はい……単刀直入に聞きます。今後、私たちはどうしますか? ダンジョンから脱出した後、どうしたいですか?」


  ダンジョンから脱出した後か。


 考えもしなかった。


 俺たちは、ダンジョンから脱出するためのスキルを持っている。

 それに脱出後は、一緒にいる必要ない。


 だけど、それでもやっぱり……。


「一緒に冒険するに決まってるだろ?」

「……っ」

「そもそもダンジョンから脱出して、それで終わりのはずがない。俺は冒険者だし、こっから先、いろんなところに行きたい。もちろん、エルノアと一緒に」

「いいんですか? 私みたいな電子生命体でヒューマノイドで……」

「いいに決まってるだろ! エルノアがどんな存在だったとしても、俺とエルノアはもう仲間だ」

「……! そうですね、私たちは仲間」


 エルノアはゆっくりと目を閉じる。

 まるで俺の言葉を、胸に刻むように。


「分かりました、クロス。今後ともよろしくお願いします」

「ああ、こっちこそよろしく頼む、エルノア!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 その後俺たちは、メンテナンスルームでパワードスーツを調整したり、ヴァリアブルソードの材質を調べたりなど、いろんなことをしていた。


 そして確認作業と調整作業が終わり、ついに脱出の日を迎えた。


「よし、手を握ってくれ」

「分かりました」


 転移スキルは、発動者の身体に触れれば、触れた人も一緒に転移する。

 決してよこしまな気持ちで手を握ってるわけじゃないぞ。


「今はこれぐらいで満足しましょうか……」

「なんか言ったかエルノア?」

「いえ、ただの独り言です」

「そうか。それじゃあ、転移を発動するぞ」

「お願いします、クロス」


 目を閉じ、ダンジョンの入り口をイメージする。


「正確なイメージができたようですね」

「ああ、ここから脱出だ」

「了解です、クロス」


 こうして俺達は、ダンジョンから脱出した。


 このファンタジーな世界を、駆け巡るために。

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ファンタジーな世界だけど、俺はパワードスーツで行きます~ダンジョンの奈落で出会った異星のAIと共に、この世界を駆け巡る~ もんざえもん @_MonZaeMon_

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