第72話 勝利とは、殆ど始末書モノの行為だと思う

 3秒後、私が放った砲弾が命中した。重装型マーズラプターの頭部が吹き飛ばされ、赤い砂塵の中へと倒れていく。


 二機のマーズイーグルがアサルトライフルの射撃を加えてくるものの、駆逐戦車マルズバーンの機動についてこれないようで、弾は掠りもしない。


「へへーん。このマルズバーン様を舐めんじゃないよ」


 ビアンカの操縦で赤い大地を縦横無尽に走り回るマルズバーン。地上では不利と見たのか、二機のマーズイーグルは背のバーニアを吹かして飛び上がった。


「翠ちゃん、チャンスだ」

「わかってる」


 すかさず対空誘導弾4発を発射する。もちろん回避されることは計算済みだ。その隙を逃さずに主砲を叩き込む。二機とも撃墜できた。


「ちょろいね。半グレごときがモビルフォース乗って粋がってんじゃないよ。まったく」


 ビアンカ嬢はご立腹なようだ。もしかして、人型機動兵器モビルフォースの扱いが下手くそだから?


「ところで乗ってた人、大丈夫かな。死んじゃってたら困る」

「上手くコクピットを外してたらから大丈夫。翠ちゃんは天才だよ」


 何だかいいように乗せられた気がする。高価な人型機動兵器をぶっ壊したわけだから、始末書を何枚も書かされるはずだ。そっちの方が心配だった。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る