第28話 はじめて一緒に過ごすクリスマス

 クリスマスイブ、気合を入れて目覚めると、衣織と凛の姿がなかった。


 こんな朝早くからどこに?


 と思っていたらリビングのテーブルに書き置きが……。


『衣織さんと出かける! 昼には戻るから絶対どこにも行くな!」


 凛の超絶汚い字だった。


 凛……中学の3年間を海外で過ごしたせいか、英語は達筆なのだが日本語を書くのが苦手なようだ。




 ——朝起きて、誰もいないのも久しぶりだ。


 凛がいて、衣織がいる生活に慣れたせいか『おはよう』を言えないことに寂しさを感じずにはいられない。


 まあ、ポジティブに考えれば2人が居ない間にプレゼントが届いてくれれば、梱包を解く時間があるし、よりサプライズ感が増す。


 僕はソワソワしながら、プレゼントの到着を待った。



 ——プレゼントは朝一の便で届いた。


 早速梱包を解くと、僕は楽器屋さんのサプライズにやられてしまった。


 なんと、プレゼント用にリボンがかけられていたのだ。


 こんな大きなものに、リボンをかけてくれるなんて思ってもみなかった。


 僕が有名になったら必ず宣伝するから!


 なんて考えてしまった。


 とりあえず僕は、用意していたクリスマスカードを挟み込んでおいた。




 ——いっきにやることが無くなってしまった。


 何もしないのも勿体ないので、クリスマスソングのソロギターを撮って、SNSにアップしておいた。


 ——そうこうしている間に、2人が帰ってきた。


「「ただいま」」


 2人は両手にたくさんの荷物を抱えていた、そして……。


「じゃーん」


 これは……。


「クリスマスケーキだぞ、兄貴は手伝わなくていいから、ソファで座って待ってろよ」


 僕にもサプライズが用意されていたようだ。


「本当に鳴は手伝わなくていいからね」


 衣織からも念を押された。


 派手な飾り付けは無いけど、衣織と凛でクリパの準備がどんどん進んでいく。なんか良いもんだ。


 2人の様子を眺めながら、スマホを手にとるとSNSの通知がすごいことになっていた。


 ちらっと見たら、さっきアップした動画が結構な再生数を記録していた。


 季節ものはやっぱ人気があるな……。


 うん……これ……プロモーションに利用しない手は無いな。


 季節ものをカバーした動画を用意する。


 結構有効な作戦になると思うのだけれど……。


 また今度、鳥坂さんを交えて相談しよう。




 ——「兄貴、お待たせ」


 準備が整ったようだ。


「じゃーん」


 本日2回目の凛の『じゃーん』なんか楽しそうだ。


「これ全部、衣織さんと凛が作ったんだぜ!」


「え、マジで……」


「マジだぜ!」


「うちのキッチン借りてきたの」


 うちのキッチンではこんな本格的なものは作れない。嬉しいです。2人のサプライズ。


 手作りケーキに、手作りチキン、手作りピザに、手作りサラダ。


 やばい……嬉しくて泣きそうだ。


 つか、2人でっていってたよね……。


 凛……お前もついに料理ができるようになったのか。


「2人でって言っても殆ど、衣織さんが作ったんだけどな! 凛が作ったのはこのポテサラと……ケーキのデコだ! とりあえず食べようぜ!」


 凛がポテサラをゴリ押してくるもんだから、ポテサラからいただいた。


「美味しい! 美味しいよ凛!」


「てへへ……」


 凛は照れながらも、すごく嬉しそうだった。


 衣織と凛の心のこもった手料理はどれも美味しかった。


 これ、油断すると本当に泣いてしまう。


 

 

 ——そしていよいよ、プレゼントタイム。


 2人は喜んでくれるだろうか。


「ちょっと待っててね」


 ギターとギグバッグ。


 さりげなく渡せないのが欠点だ。


「衣織はこっち、凛にはこっち、僕からのクリスマスプレゼント」


 ん……2人からの反応が何もなかった。


 クリスマスプレゼントに楽器系ってロマンがなかった?


 なんて考えていると……。


「兄貴これって……」


「凛が欲しがっていたギグバッグだよ」


「ま……マジで」


 超驚いた顔をしている。その顔が見たかった!


「でも、これ高かっただろ?」


「気にすんな、気持ちだ」


「ありがとう……すごく嬉しいよ! 大事に使う!」


 凛のこんな可愛い笑顔久しぶりに見た気がする。プレゼントしてよかった。




「鳴……これって」


「そうだよ、衣織が欲しいって言ってたフルアコ」


「……そんな高価なもの」


 衣織も超驚いた顔をしている。良い表情いただきました。


「凛にもいったけど気持ちだから、気にしないで」


「ありがとう……ありがとう鳴……大事にするね」


 衣織はちょっとほろっときながらも、笑顔を見せてくれた。


 頑張った甲斐があった!




「凛からはこれ」「私からはこれね」


 2人が用意してくれたのは、ギターのストラップだった。


 僕がメインで使っているエレキとアコギ、2本のギターの……。


「これ……」


 このストラップも結構高い……2人ともバイトなんてしてないから結構無理したんんじゃ……。


「兄貴いつもボロボロの使ってるからな」


「そうそう、前から気になってたの」


「ありがとう……嬉しいよ」


 僕は、ついに我慢できなくなり泣いてしまった。


「なんだ兄貴涙腺弱いな?」


 お前もちょっともらい泣きしてるじゃないか。


「喜んでもらえたようで何よりよ」


 嬉しい、本当に嬉しい。


 このチョイス……僕をずっと見てくれていたってことだ。


 気持ちが嬉しい。



 衣織とはじめて一緒に過ごすクリスマスは、忘れられない感動的なものになった。


 この後、3人でクリスマスの定番曲をセッションした。


 もちろん僕は早速新しいストラップをつけて。


 衣織はプレゼントしたフルアコを手に。




 自分たちのためだけに演奏する。


 たまには良いものだ。



 ————————


 【あとがき】


 よかったね! 三人とも!


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『魔法学園でドSな彼女達のオモチャな僕は王国の至宝と謳われる最強の魔術師です』

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