第27話 世界にひとつしかないプレゼント
はじめてのお給料……思っていた金額よりかなり多かった。
ステージが計4回。リハーサルが計3回。
それで、こんなにも……。
本当に計算が合っているのかと不安になり、学さんにメッセージで確認したぐらいだ。
もしかして色をつけてくれたのかもしれない。
——ともあれ、はじめて自分で稼いだお金。
パーっと使わせてもらいます!
衣織へのクリスマスプレゼントに!
——で、早速プレゼントを買いにショッピングモールへ。
プレゼントはもう決まっている。
楽器屋デートしたときに衣織が欲しがっていた、ギターだ。
価格も手頃で見た目も良かった。
在庫も確認した。
最後に1度、試奏させてもらって購入するだけだ。
——衣織のお目当てのギターはフルアコースティックギターと呼ばれるギターで、少し取り扱いが難しかったりする。
フルアコと呼ばれたり、アーチトップと呼ばれたりもする。
ジャズギタリストや、ソロギタリストが好んで使う印象だ。
今のトリッキーな演奏には合わないから僕は使っていないが、衣織とは相性のいいギターになるはずだ。
僕は店員さんに早速試奏をお願いした。
あまり聞かなかったメーカーだから、試奏の準備をしている間にこのギターについて、色々と教えてもらった。
元々はバイオリンを作っていたメーカーで、このタイプのギターを作る加工技術には定評があるらしい。
しかも、この価格なのにラッカー塗装。
ギターは大まかに分けると、ポリ塗装とラッカー塗装があるのだけれど、ラッカー塗装の音の方が好まれる傾向にあり、高額だ。
これはラッキーだ。
何故、この価格でこの仕様なのかも率直に聞いてみた。
実はこのギター……。
職人さんが塗装を間違えたらしいのだ。
もちろん品質には何の問題もない。見る人によってはカラーリングが少しチグハグに感じるだけだ。
でも衣織はこのチグハグなルックスが気に入っていた。
なんという巡り合わせだ。
考え方を変えたら世界に同じものが存在しないギター……。
プレゼントのために存在しているようなギターだ。
世界に1本しかないギターを君に贈ります。
テンションが上がってきたところで早速試奏だ。
——軽いタッチなのにクリアな響き。
いいぞ、このギター。
このタッチを拾ってくれるのなら、かなり繊細な表現が可能だ。
僕は、このことで更にテンションが上がり心のままに演奏した。
和音の粒だちも申し分ない。
このギターなら、ピアノのように伴奏と旋律を同時に弾いても音が埋もれることはないんじゃないか。
主旋律と速弾きを同時に行うテクニックがあるのだけれど、個体によっては音が濁ってしまい、いい感じに聞こえないことがある。
でもこのギターは違う。
全ての音がクリアーに聴こえる。
太鼓判を押して衣織にプレゼントできる。
——試奏を終えると人だかりが出来ていた。
また、やってしまった。
動画を撮っている人もいて、軽く拍手もいただけた。
ん……でもこれ……。
試奏をするだけでこんなにも人が集まってくれるなら、普通にプロモーションにも使えそうなんだけど……。
楽器屋さんに迷惑をかけてしまう可能性もあるからゲリラではやらない方がいいな。
まずウェブサイトから問い合わせることにした。
もしかしたら何か広がるかもしれない。
——そして最後の難関はサプライズだ。
衣織と同棲しているのに、こんな大きなもの持って帰ったらすぐにバレる。
悩ましい……。
僕がもじもじしていると、店員さんが……。
「彼女へプレゼントですよね? 配送しましょうか?」
ナイスな提案をしてくれた。
つか、僕たち、しっかり店員さんに覚えられていたようだ。
ついでにと言ってはなんだが、凛が欲しがっていたギグバッグも購入しておいた。
ハードケース頑丈だけど重いから地味にきつい。
でもギグバッグなら頑丈な上に軽いので、普段使いには最適だ。
まあ、頑丈具合は価格に比例している。
思ったよりもギャラが多かったので、凛へのプレゼントも奮発した。
結構なお値段になったけど、お世話になりっぱなしだから、これぐらいするのは当然だ。
おかげですっからかんだ。
でも、ギリ食事はいけるから大丈夫だ。
——二人が喜んでくれたら僕は幸せだ。
帰る道すがら、そんなことを考えていた。
二人といえば昨日……何か意味深な会話をしていたんだけど、なんだったんだろう?
僕に関係することだよね?
まあ、何かあれば直接言ってくれるよね。
楽天的な僕だった。
————————
【あとがき】
準備万端です!
新作公開しました!
『魔法学園でドSな彼女達のオモチャな僕は王国の至宝と謳われる最強の魔法師です』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054903431470
読んでいただけると嬉しいです!
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