第26話 怒涛の一週間

 今週は大変だった。


 まず、土曜日が初仕事となるロカビリーのライブ。


 そして、日曜日が男装……じゃなかった男として……ミュージックビデオ撮影。


 そして金曜日は仕事のリハーサル。


 その他、平日は部活と絵コンテの詰め、仕事の曲の暗譜、鳥坂さんとタイムテーブル作成。


 頭がパンクするかと思った一週間だった。



 ——ことの発端は鳥坂さんだ。


 鳥坂さんがスタジオを間違えて、一週間早く押さえてしまったのだ。


 間違えたなら予定を変更すれば良いだけの話なんだろうけど、スタジオはキャンセルするにもお金がかかる。ぶっちゃけ懐事情の辛い僕たちには無理な選択だった。


 鳥坂さんが自分のミスだから『ボクが払う』ってなったけど、流石にそれを受け入れることはできなかった。


 だって……僕たちのミュージックビデオの編集であんなにも消耗していたんだ。


 ミスも起こるだろう。


 皆んなの予定が空いていたのが幸いだった。




 ——だもんで、今週の昼は毎日、鳥坂さんと一緒だった。


 数え切れないほどのラッキースケベが起こった。


 ラッキースケベのギネスレコードに認定される勢いだ。


 僕が座っている時に鳥坂さんがよろけて、おっぱいに顔を埋める。


 脚立に乗って物を取れば、降りる時にスカートをひっかけパンモロになる。


 何も無いところでよろけて、押し倒される。その拍子におっぱいを揉む。


 流石にスカートの中に顔を突っ込むような奇跡のラッキースケベは起こらなかったが、この間、鳥坂さんのおっぱいやお尻を触っていない日は無かったと言っても過言ではない。


 打ち合わせは二人で行うこともあれば、メンバーと行うこともある。


 鳥坂さんのラッキースケベはメンバーがいるから発生しないなんて、生優しいものじゃない。


 時枝と穂奈美には毎回白い目で見られ、流石の衣織も少し呆れ気味だった。


 僕も思春期の男の子なんで、毎晩悶々としていた。




 ——土曜日のライブは大盛況だった。


 リハーサルの現場力にも驚いたが、本番の本気モードはもっと驚かされた。


 音の躍動感が半端なかった。


 つか……暗譜をしておいてよかった。


 今の僕の実力じゃ、譜面を見ながらこの演奏についていくのは不可能だ。


 キツかったけど、妥協しなくてよかった。


 僕は織りなす音で、アドリブ一辺倒なライブ感の演出を行っていたが、そこの考え方を改めなくてはならない。


 臨場感、躍動感、ライブ感。


 譜面通りに演奏してもこれほどの表現ができるのだから。


 将来、僕たちのファンになってくれる人の中にも、アドリブじゃなくて音源通りの演奏を聴きたいって人が一定数いるはずだ。


 まだ見ぬファンのためにも、まだまだ出来ることが沢山ありそうだ。




 ——日曜日の撮影。


 もっと身体に疲れが残っているかと思ったが、案外平気だった。


 今日を乗り切ればって気持ちも働いたかもしれないし、昨日のライブでテンションが上がりっぱなしだったのかもしれない。


 トラブルらしいトラブルも、ラッキースケベもおこらず、撮影は無事終了した。


 でも、僕たちの本番は鳥坂さんがミュージックビデオを完成させてからだ。


 目的はメジャーデビュー。


 ミュージックビデオはプロモーションの一貫。


 撮影はそのための下準備の一つに過ぎない。


 たとえこれがスタートラインだとしても、そこに立てた喜びはひとしおだ。


 みんなお疲れ様。




 ——帰宅すると僕は、リビングのソファーで眠ってしまった。


 衣織の膝枕で。


 厳密には眠っていなかったのかもしれない。


 しかし、起きようと思っても起きられなかった。


 意識はあるような無いような……そんな曖昧な感覚だった。


 でも、僕は覚えている。


 衣織と凛の会話を……。


「ねえ凛ちゃん、鳴って昔からこんなにラッキースケベばかりだったの?」


「ん……ああ……確かに兄貴は子どもの頃からラッキースケベは多かったけど……何かあった?」


「うん……本人も無自覚だし、相手にも悪意はないんだけど……こう、続くと……イラッとするというか」


「へー意外だ! 衣織さんもそんなふうに感じるんだね」


「私だって人並みにはね……言っても仕方ないから言わないだけよ」


「大人だなあ」


「凛ちゃんも十分大人だと思うけど」


「え、そうかな……例えばどんなところが?」


「空気読みまくりなところ!」


「……そ……そんなこと」


「無理しないでね……もし悩んでるのなら……相談してね?」


「……衣織さん……うん……まだ大丈夫」


「ほら、また空気読んだ」


「仕方ないよ、こんな兄貴なんだから」


「苦労してたのね……」


「衣織さんもしてるでしょ?」


 なんか意味深な会話だった。が僕には意味がわからなかった。


 眠かったせいだろうか?


 それとも僕が鈍感なのだろうか?


 起きたら衣織に聞いてみようと思っていたけど……眠りが深まるとともに、このことを忘れてしまった。

  


 ————————


 【あとがき】


 お疲れ様でした! プレゼント代もゲットだぜ!


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『魔法学園でドSな彼女達のオモチャな僕は王国の至宝と謳われる最強の魔術師です』

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