第25話 絵コンテ完成

 ようやく絵コンテが完成した。


 女装撮影の時に鳥坂さんに頂いたノートを、随分参考にさせてもらった。


 この絵コンテを元に、意見を出し合って完成形に近付けていくのだけど、メンバーと鳥坂さん、どちらから先に相談する方が良いのかが悩ましい。

 

 メンバーから先に打ち合わせると、技術や予算面で再現出来ないことが出てきた時に困る。


 鳥坂さんから先に打ち合わせると、後で要望が出てきた時に困る。


 同時に打ち合わせると、なかなか意見がまとまらなくて困る。


 一長一短なのだ。


 で、それを衣織に相談してみた。同棲はこんなところでも役立つ。


「私なら鳥坂からかな」


 と、即答する衣織だった。ちなみに理由も聞いてみた。


「だって、鳥坂の感性を信じて鳥坂にお願いしたわけでしょ? この間の撮影で思ったけど映像に関しての閃きは、鳥坂が上よ」


 納得の理由だった。


 何というか、いつもながらの大人な意見。これは一つ年上だからじゃなくて、考え方だと思う。我が彼女ながら学ぶべき点が多い。




 ——僕は早速、鳥坂さんにコンタクトを取った。


 鳥坂さんは、この間ミュージックビデオ用に撮影した動画の編集が忙しいらしく、昼休みぐらいしか時間が取れないとのことだった。


 なので明日の昼は鳥坂さんのところに行くと、衣織に伝えておいた。


 

 ——で、翌日の昼休み。映像研究会の部室を尋ねると。


「や、音無きゅん……今日は何しに?」


 鳥坂さんは、かなりげっそりした様子だった。


「だ、だ、だ、大丈夫ですか?」


「うん? ……何のことかな……締め切りなら大丈夫だよ……大丈夫だよ……だい……」


 全然大丈夫じゃなかった。


「もしかして寝てないんですか?」


「ん、寝てるよ……だって今も寝てるじゃないか……音無きゅん……夢の中まで来られるとボク困るよ」


 寝ていないようだ。


 こんな状態で相談してもいいのだろうか? 相談することすら躊躇してしまう消耗っぷりだ。……でも流石に鳥坂さん抜きではこれ以上先に進めない。


「あ、絵コンテだったね音無きゅん……とりあえず、そちらにかけてくれたまえ」


 そちらとは、部室の真ん中に長机2脚を向き合わせて配置し、周りにかなりの数の丸椅子が置いてある打ち合わせスペースのことだ。この椅子に全員座ったら満員電車どころではないだろうなと思った。


 なんかずっと音無きゅんだし、喋り方もおかしくなっている。……保健室に連れて行った方がいいレベルなのでは……と思ってしまう。


 僕が丸椅子に腰をかけると、鳥坂さんは僕の隣からずらーっと丸椅子を並べ出した。


 そして丸椅子に横になり僕の足を膝枕にした。


「……えーと……鳥坂さん?」


「ん、あ……気にせず続けたまえ」


 何をだよ! つか何キャラだよ! ……そんなことよりも……寝転んでいてもその存在感がすごい爆乳。鳥坂さんは目のやり場に困る人だ。


 つか……この状況で僕はどうすれば正解なんだ?


 膝枕をしてしまったことで、動くに動けない。


「とりあえず見せて」


「あ……はい」


 僕は手に持っていた絵コンテを書いたノートを鳥坂さんに見せた。


 丸椅子に寝転び、僕を膝枕にし、一見ふざけたシチュエーションだが、その眼差しは真剣だった。


 鳥坂さんから寝転びながらだけど、的確な修正の指示をいただけた。


 修正の指示も大半は、表現というよりも技術的な可否だった。


 なるべく、僕の意見を尊重しつつも、技術的に無理なところ、秒数的に不可能なところ、客観的に見て意味のないシーン。


 これらが的確に指摘された。


 ふざけた体勢だけど、さすがの鳥坂さんだった。


 そして、全ての指摘が終わると、鳥坂さんはいきなりムクリと起き、うつむいていた僕のおでこと、起き上がる鳥坂さんのおでこが、ゴッツンコし、僕たちは丸椅子から転げ落ちた。


 何をどうやったらこの体勢になる?


 僕の眼前には、見事にスカートがめくれ上がった、鳥坂さんのお尻が……。


「あ、あ、あ、ごめん音無くん!」


 鳥坂さんが上体を起こしたことによって、僕の顔は鳥坂さんのお尻の下敷きになった。


「あ、あ、あ、あ、ごめん音無君!」


 そこから鳥坂さんが膝立ポーズをとったことより、僕が寝転んで鳥坂さんのスカートの中を覗き込んでいる体勢になってしまった。


 な……なんでこうなった。


 そんなことを考えていると……「師匠打ち合わせ終わった!」


 時枝と穂奈美が部室に入ってきた。




『『あ』』




「し、し、し、師匠なにやってんですか!」


「音無くんサイテー」


「ち、違うんだ」


 僕が慌てて上体を起こすと、スカートの中で僕の顔と鳥坂さんのお尻がゴッツンコし、また見事にスカートがめくれ上がった鳥坂さんのお尻が現れた。



「し、し、し、師匠!」


「うわー本当サイテー」




 二人に事情を説明したがなかなか信じてもらえなかった。


 僕でもちょっと信じられない、奇跡のラッキースケベだった。


 

 ————————


 【あとがき】


 このラッキースケベの矛盾点を鳥坂さんに指摘してもらおう!


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『魔法学園でドSな彼女達のオモチャな僕は王国の至宝と謳われる最強の魔術師です』

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