第107話 突然の終わり
俺と結が指にチョコを付けて食べさせあってる時、玄関からピンポーンと音が鳴る。
だよな。分かってた。絶対来ると思ったもの。
だから結に手を出さなかったんだ。
最中に来られると気まづいからな。
「晃太さん。来ましたね」
「あぁ……奴らだ」
「……なんでサングラスかけて手を組んで顎を乗せてるんですか?」
「…………言うな。やってみたかったんだ」
「はぁ。それでどうします?」
「結さん? 機嫌悪い?」
わざわざ聞くまでもないが、結はご機嫌ななめだ。ムスッしながら俺のふやけた指を握っている。
その間も玄関からは音が鳴り続け、更にはドアを叩く音とチャイムを連打する音も。
「まったくもう! お姉ちゃんも秋沢さんも学校で渡せば良かったのになんで部屋にくるんですかねっ!」
「まぁ、それは部屋が近いからだろうなぁ……」
「ですよね……。うぅ……このままではうるさいのでカギ開けてきますね」
結はそう言うと少し乱れた胸元とスカートを直して玄関に向かう。ホントに少しだけだ。ホントに。ちょっと動いてズレただけだから変なことはしてないからな………少ししか。
「は〜い、今開けますね。だからそんなにチャイム鳴らさないでくださいってば」
そして鍵を開けた瞬間だ。
「へぇ〜い!! ハッピィバ〜レンタァ〜インおにぃ! チョコだよぉ〜! おふっ!」
叫びながら部屋に飛び込んで来たゴスロリ彩那が結の胸に埋まった。おい、それは俺のだ。
「こ、ここが桃源郷……」
「えっと……彩那ちゃん?」
「ふおぉぉぉぉっ! やっぱり柚ちゃんと違って結ちゃんのオッパイ柔らかぁぁぁぁい!! フカフカするよぉぉぁ!!」
「彩那ちゃん!? あっ! ちょっ! そんな頭グリグリしないで!? ふぁっ! そ、そんなに揉まないでっ!?」
何気に柚をディスるのはやめてあげて!?
そして結も困ってるからやめてあげて!? 変な声出ちゃってるから!
「えっと……入ってもいいかしらね?」
「あれっ!? 母さん!?」
「お義母さま!?」
結、その呼び方なに!?
「はーい母さんよ♪ はい、私からもバレンタイン。ついでに父さんもいるわよ?」
「はぁ〜い父さ──」
「帰れ」
「彩那ぁぁ〜! お兄ちゃんがパパに帰れっていうんだけど!?」
「気をつけてね? 帰る時は連絡するから迎えに来てね!」
「娘が冷たいっ!」
こうしていつものやり取りをした後、父さん母さんに彩那が部屋に入ってきた。
そして俺と結が並んで座り、その対面に三人が座る。
てっきり柚と秋沢かと思ったけど、予想が外れたや。それにしてもわざわざバレンタインに来るなんて何の用事なんだ?
「うんうん。仲良さそうで母さん安心したわぁ〜」
「そうだな。バレンタインだから変なことでもしないかと思ったけど、その辺の節度は守ってるようで安心したぞ」
すいません。ちょっとしてました。
「彩那、早くおばちゃんになりたい」
「晃太さんっ! ねぇ晃太さんっ!!!」
彩那は何を言っているのかな? そして結はキラキラした目で見るのをやめようか。
作らないからな? まだまだ早すぎるからな? だから袖をクイクイ引っ張るな。
「で、わざわざこっちまで来て何の用事なんだ? しかも全員でなんて」
「ん? まぁ、あれだな。お前たちが上手くいっているかの確認だな。彩那は連れてきたらチョコくれるっていうから連れてきた」
「どんだけだよ。で、確認?」
「そうよ? そして仲良さそうな姿を見て安心したわ。これで大丈夫ね」
大丈夫? 何を今更。この前母さんには電話で宣言したばかりだってのに。
「そして結ちゃん? 晃太の事は好き? 何があっても」
「は、はいっ! 大好きです! この気持ちは変わることはありません」
照れる……。
「そう、良かったわ。なら……晃太に結ちゃん? 今週末で同棲は終わりにしなさい」
「「えっ?」」
…………え?
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