第105話 チョコレートファウンテン
「ちょ、ちょっと待てよ? え? サボった? 学校を? え?」
結の言った事に理解が追いつかない為、念の為もう一度聞き直す事にした。俺の聞き間違いかもしれないからな。
「あ……アイタタタ。胸が痛いです。胸が痛くて休みました。晃太さん、胸をさすって下さい」
「わかった。じゃあベッドでな」
「きゃあ♪」
「ってんなわけあるかぁ! 体調不良で休んでてこんなに部屋の飾り付け出来るか!?」
俺は部屋を見渡す。壁には【HappyValentine】の文字をカラフルな折り紙で切り抜いた物が貼られ、更に折り紙を細く作って輪っかにしたものを繋げた鎖が部屋の角と角を繋いでぶら下がっている。
小学校のお誕生日会かよ。
「頑張りましたっ!」
結は両手をグッと握り、誇らしげにムンッ! と胸を張る。胸もユサッと揺れる。
「頑張りましたって……。なんでまたサボったりなんかしたんだ? 柚は知ってんのか?」
「それはですね? 久我くんが何を考えていたとしても、私が学校に行かなければ何も出来ないからです。そして行かなければ、バレンタインのチョコを私が晃太さん以外に渡すというありえない噂もおきませんから! 後、お姉ちゃんには言ってません。だって怒られるもん」
「もんって……。じゃあ学校に連絡は?」
「それもしてませんっ! だってサボっちゃったんですよ? 普通は今日サボりますって連絡しないですよね?」
「いや、そこはせめて風邪とかなんか言っておかないと……柚に怒られるぞ?」
「…………晃太さん、ちょっと待ってください」
結はそう言うと自分のスマホを取り出す。そして両手を使い、俺には無理なフリック入力の動きでなにやら文字を入力していく。……すげぇはえぇな。
そして入力が終わってしばらく。結のスマホが小さく震える。
「お待たせしました。お姉ちゃんには生理痛で休んだって言っておきました。明日欠席の手続きをしてくれるみたいです。だけどちゃんと朝のうちに連絡するように怒られちゃいました」
「そりゃそうだよな」
「しょぼんです」
「落ち込んでないだろ?」
「サボって悪い子なのでお仕置……します?」
「全然落ち込んでないなぁ!」
「まぁそれよりも早くバレンタインパーティーしましょう! ご馳走も沢山つくったんですよぉ〜♪ はいこっちこっち」
そう言う結に背中を押されてテーブルまで行くと、確かにご馳走が並んでいた。並んでいたんだが、それよりも気になる物が一つ。
「これなに?」
「なにがですか?」
「いや、このチョコがなんか滝みたいに流れてるやつ」
「あ、これはですね? チョコレートファウンテンっていうんです」
「え? チョコファ……え?」
「チョコレートファウンテンです。こうやって使うんですよ?」
結はテーブルの上のフォークを手に取ると、更に乗せられていたバナナを刺し、それをチョコの滝にくぐらせた。
「はい、晃太さんあ〜ん」
差し出されたチョコにコーティングされたバナナを食べる。
「ん、うまい」
「でしょ〜? こうやって使うんですよ」
「あれか! チーズフォンデュのチョコ版みたいなやつか!」
「ん、ん〜? まぁそんな感じです」
「こんなのあるなんて初めて知ったな」
「こっそり買って隠してたんですよ? 見られたらバレちゃうと思って。でも隠さなくても大丈夫でしたね〜」
ん? なんか……あれ? 呆れられてる? あれ?
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