第104話 バレンタイン その結果
「ぬぐぅ……か、体が重いっ……」
疲れているはずなのに目覚ましアラームより早く起きた俺は、隣で寝ている結を起こさないようにベッドから抜け出す。
その時にズレた布団を結に掛け直すと、俺は出勤の準備を始める。
起こそうかと思ったけど、結も疲れてるだろうからそのまま。家を出る前に声をかけても大丈夫だろう。
さて、今日はバレンタイン当日。久我がどんな手を使ってくるかわからわないからな。気合い入れていかねぇと。
朝飯と弁当は……昨日の残りでいいか。たまには自分でやって結の負担も減らしてやらないと。
よし、洗顔も歯磨きもおっけ! 後は着替えるだけだ。
「ん……ぅん? こうたさん? どこぉ?」
あれ? 起きたのか?
「結おはよう。起きたのか? たまにはもう少しゆっくり寝てても良かったのに」
「あ……晃太さんいたぁ〜……んふふ〜♪」
「わわっ」
まだ寝惚けているのか、俺の手を掴むと布団の中に引っ張り込んで頬擦りしてくる。
「お〜い。俺、そろそろ仕事行くぞ?」
「……仕事? っ!? わっ! お弁当! 朝ごはん! えっ、うそ! 今何時!?」
俺は下着姿のままでベッドから飛び出してキッチンに行こうとする結の腕を掴む。
「落ち着け落ち着け。朝飯も弁当も自分で準備したから結はゆっくりしてていいぞ」
「そ、そんな……。妻としての役目が……。晃太さんには何もさせないで全部私がお世話してゆくゆくは在宅ワークで生活な必要な分のお金を得て、私無しでは生きていけないようにするつもりだったのに……」
おいおい。それじゃあ駄目人間まっしぐらだから勘弁してくれ。てか、そんな事マジで考えてたの!?
「まぁ、疲れてたんだろ」
「かもしれません。起きれると思ったんですけど、昨日……」
そこで言葉を止めるな。慈しみのある顔で腹を撫でるな。
「ま、まぁとりあえず俺は仕事行くぞ?」
「あ、はい。行ってらっしゃい。ご馳走用意して待ってますね」
「楽しみにしてる」
そして軽くキスをして俺は部屋を出た。
◇◇◇
学校に着くとすぐに作業に入る。久我がいつ動くかわからないからな。
あらかじめ昨日の内に今日の作業の七割方は済ませてあるから、残り三割をなんとか九時までに終わらせた。
よし、後は久我の教室の近くに作った作業用ロッカーから続く偽壁の中に隠れながら様子を見よう。
──昼休み。廊下をキョロキョロしながら歩く生徒が多い気がする。バレンタインだからか?
久我も発見。結の教室を見てる。チャンスを伺ってるのか? 篠原に変に勘づかれるとまずいから、結の教室には近づいてないんだよな……。
──五限目の中休み。廊下を久我が肩を落として歩いている。篠原と和華ちゃんが何かを話してる。
──放課後。久我が女子に責められている。その筆頭が篠原。久我を庇う奴も無し。久我涙目。
そして校舎でうろうろする男多数。うん、わかる。わかるけどそんなの無駄なんだ。無駄なんだよ……。
にしても……どういうことだ? 何があった?
結局、特に何も起こることなくタイムカードを押して俺はアパートに帰った。
「ただいま〜」
「あ、晃太さん! おかえりなさ〜い」
「なぁ、今日何があったんだ? 何が起きてもいいように隠れて見てたんだけど、いつの間にか久我が泣いてたんだよ」
「わかりません♪」
「ん? おぉ? わかりません?」
「はい。だって私……今日は学校サボりましたから♪」
………………はい!?
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