第101話 フラグ
「うわ、おにいさんなんかすっごい悪い顔してるし」
ん? おっといかんいかん。下手に勘づかれるのはマズイな。
これで俺と結が付き合ってるのがバレたら元も子もない。
ってあれ?
「ん? ちょっと待てよ? お前、もしかしてそれを伝える為だけに俺に付き合ってとか言ったのか?」
「だって……。莉音、お金も無いし馬鹿だからお願いする為にはそのくらいしないとダメかと思って……」
「お前バカか。もしそれで俺がおっけー出してたらどうするつもりだったんだよ」
「お願いだけ聞いて貰ったら別れようかな? って。けどそれじゃああんまりだから、おっぱいくらいならちょっとは触られてもしょうがないかな〜? くらいは考えてたけど。けどまぁ、おにいさんはそんな事をしなくても大丈夫そうだからラッキー♪ 的な?」
あ、頭が痛い……。こいつ、目先の目的しか見えてないタイプだ。その手段で自分がどうなるかなんて全然考えてないじゃねぇか。
俺はチラッと時計を見る。うん。まだ大丈夫だ。
俺は倉庫の扉を開けて、すぐ近くのソファーを指さすと、篠原に向かってこう言った。
「ちょっとそこ座れ」
「え、やだし」
「いいから、す・わ・れ!」
「えーなになにー? もしかして付き合いたくなっちゃった系?」
「阿呆が。呆れちゃってる系だっての。お前、付き合うとかちょっと触らせるくらいしょうがないとか、簡単に考えすぎ。すぐに別れればいいとか、それだけで済むと思ってんのか?」
「え、なに? 説教? それマジ勘弁。なんかされそうになったら逃げればいいだけだし?」
こ、こいつは……!
「お、お前なぁ……。それでどうにかなるわけないだろ? 中にはそれで我慢できなくて、強引に迫って来る奴もいるんだぞ? 俺は篠原に興味ないからそんなことはしないけど、他の男だったらわかんないんだぞ? もう少し危機感とかを持てよ。何かあってからじゃ遅いんだからな?」
「莉音可愛いのに興味ないとかひどくなーい? てかてか、おにぃさんそーゆー漫画とか見すぎなんじゃない? そんなことそうそう無いってぇ〜」
そう言いながらケラケラ笑う篠原。
確かにそう言う漫画は見るけども! だって成人してるからな! だけどニュースとかでもそういう事件やってるじゃねぇか!
はぁ、ダメだこいつ。何言っても響かねぇ。
それなら──
「わかった。興味無いとかは失礼だな」
「でしょ〜?」
「確かに篠原は可愛いもんな」
「おっ! わかってるじゃ〜ん!」
「そういえばさっき、お願いきいてくれたら胸くらいは、って言ってたよな?」
「……え、あ、おにいさん? 待っ、ちょっ──きゃっ!」
俺はソファーに座ったままでいる篠原の両手を片手で掴むと、もう片方の手で口を塞ぐ。
「この倉庫な? 作業する騒音が漏れないように防音になってんだよ。だから声が漏れることはないんだ」
「……っ!? 〜〜っ!」
篠原は目を大きく開くと口をもごつかせる。
「だから……」
俺がそこまで言うと篠原は涙目になってきた。そこで俺は篠原の口から手を離し、ツナギのポケットに手を入れてあるものを掴む。
「い、いやっ! ごめんなさいごめんなさい! やめて! もうそんな事言わないからっ! 莉音初めてなのっ! 初めてがこんなのなんていやっ!」
「もう遅いっ!」
「いやぁぁぁぁっ!」
ポイッと。
「もごっ。……んも? 甘い……。これ、チョコ?」
口をモゴモゴと動かす篠原。
俺が一口チョコをポケットから出して口に放りこんだのだ。
「とまぁ、こんな事になるかもしれないんだから、もう少し気を付けるんだな。ほれ、そのチョコ食ったらすぐに教室行きな。授業の前の糖分は良いんだぞ?」
「ば……」
「ば?」
「バッカじゃないの!? ビビったじゃん! 怖かったじゃん! ちょっとだけ漏らしそうになったじゃん! むしろちょっと出ちゃったじゃん! だけど強引にくるのがちょっとカッコイイとも思っちゃったじゃん! ほんとバッカじゃないの!? もう行くからっ! ……また、来るから……」
「来なくていーぞー」
「ばかっ!」
篠原は早口でそう捲し立てると、倉庫から出ていった。
ふぅ、これで少しは先を考えないで行動するのを考え直してくれるといいんだけどな。
結のことを心配してくれるような子だったから、変な男に引っかかって欲しくないし。
そこで俺はもう一度時計を見る。
「お、そろそろ準備始めるか」
そしてそう呟いた時だ。
「晃太! さっきここから女生徒が走り去っていったけど、いったい何をしたの!? あんたまさか結がいるくせに他の生徒に手を出したんじゃないでしょうね!?」
……げ、柚だ。
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