第74話 妄想ガールズ
アパートを出て四人で歩く。
しばらく歩いて人通りが増えてきたところで、三人から少し離れるように歩くスピードを落とした。
これは毎回の事。
俺と結の立場の違いもあるから仕方がないしな。卒業までの辛抱ってことで、結も納得してくれた。
ただ、その反動が部屋に帰ってきてから凄い。とにかく離れない。ちょっと移動するだけでも服の裾を掴んでポテポテと着いてくる。離そうとすると『うぅ……』ってなる。うん。可愛い。こう……普段のお淑やかな感じとのギャップがヤバいよね?
いや、分かってる。普通は重いとか思うかもしれない。けど、結が長い間俺の事を思ってくれたのを知ったからな。邪険にはできないさ。
後は俺の煩悩だな。今はなんとか一線を超えずにいるけど、いつ決壊するのかが自分でもわからない。結のアピールが直接的すぎるんだよなぁ……。
「晃太さん? どうしました?」
「ん、なんでもないぞ……あれ?」
離れて歩いていたはずの結が、何故か目の前にいる。いや、結だけじゃなくて柚と秋沢もだ。
「なんで距離詰まってんだ? 離れて歩く決まりだったろ?」
「はい? あんた何言ってんの? 私達は普通に歩いてたわよ? あんたがどんどん前に進んできたんじゃない」
「うん、そう。こうたんが迫ってきた。惜しかった。もう少し進んでたらボクのこのクッションで受け止めてたのに」
柚は腕を組んで呆れ顔。秋沢は自分の胸を持ち上げている。やめんか。そういうことすると結が──
「二人とも? 晃太さんは私の彼氏なんです。その私の前で露骨過ぎません?」
「ぐぬぅ!」
「ズルい」
ほらぁ! くっついてきたぁ! 俺の腕が結の胸に埋まるぅ! 最高か? 最高だな!
でもダメだ! そろそろ人通りに出るから。
「結、ダメだっての」
「うぅ……一緒に登校したいのにぃ……。そうです! 晃太さん! もう一度高校通いませんか?」
「嫌だよ。無理だよ。この歳で制服着るとか痛すぎだろ。教室で浮くわ!」
「いいアイデアだと思ったんですが……」
なんでそう思った!?
公開処刑にも程があるわ!
「それだと私の生徒が晃太になるのよね? 勉強出来ない晃太を放課後残して二人きりで……それ、いいわね……。あの頃は学校でしたのなんてキスくらいで、そんな事出来なかったし……」
「こうたんが後輩……。先輩特権で保健室に連れ込んで……いい」
おーい。お前ら帰ってこいや。妄想を口に出すんじゃねぇよ。柚はちゃっかり昔の事話してんじゃねぇよ。秋沢は変に生々しいのやめろ! それもまたなんかの本で見たのか? え? 最近の少女漫画ってそこまで書いてんの? 薄い本じゃなくて? マジで?
「晃太さんと同じ学校……誰もいない教室でカーテンに隠れながらキス……そのまま……ひゃあ」
結もかよ……。顔を赤くしながらひゃあ、じゃねぇよ。なんで満更でもなさそうなんだ? そんなのバレたら即クビだからやめてくれ。
……まぁ、俺も憧れはするけどさ。いや、しないぞ? しないからな!?
「おい、俺は先に行くからな? ある程度の距離をおいてから来いよ?」
「「「えへへへへ……」」」
あぁ、ダメだこりゃ。遅刻すんなよ? 俺はちゃんと言ったからな?
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