第73話 キスから始まる一日 【二部開始】

「んっ……んん……」


 狭いシングルベッドの中、体に感じる重さと口に感じる柔らかさで目が覚める。

 ゆっくりと目を開くと、すぐ目の前には片手で耳に髪をかけながら目を閉じた結の顔があった。

 おはよう、と声をかけようとしてもかけれない。

 そりゃそうだ。俺の口は結の唇でしっかりと塞がれているんだから。

 しかも中途半端に口を開いたせいか、今がチャンスとばかりに結の舌が侵入してきてゆっくりと暴れる。


 ……俺が起きてるのに気づいてないのか?


 俺は目を開けているが、結はしっかりと閉じてキスに夢中になっている為、まだ俺が寝てると思っているみたいだ。なら──


「んっ……んん? ………んんっ!? ぷふぁっ! 晃太さん? 起きてたんですか!?」

「あぁ、おかげさまでな。おはよう、結」


 俺もやり返してやったらようやく気付いたみたいだ。やっと体を起こして挨拶を返してくれる。ただ、制服姿で俺の上にまたがっているのは流石に絵面がひどい。


「はい、おはようございます。ご飯出来てますよ?」

「ん、分かった。けど……この状況の説明をお願いしたんだけど?」

「あぁ、それは簡単です。まず、私はいつも通りに起きたんです。そしてまず、晃太さんの寝顔を見に来てしばらく眺めてました。そしてベッドに潜り込むのを必死に我慢してほっぺにちゅぅした後、朝食を作ってから制服に着替えました。その間にも起きて来ないので、もう我慢出来なくて潜り込んだんです。潜り込んでそこに好きな人の唇があったら当然キスしますよね?」


 どこの当然なのかを教えて欲しいんだが?

 にしても、ちゃんと目覚ましのアラームをセットしたはずなんだがな……。

 俺は枕元にあるスマホを手に取り、確認する。うん、いつもなら起きてる時間だな。無意識のうちに消したのかな? うーん?


「ちなみに目覚ましのアラームは私が止めました。 変わりにほっぺにちゅぅしましたよ? なのに起きないんですもん」

「いや、さすがにそれで起きれるわけないだろう!?」

「知ってます。晃太さんが一回目のアラームで起きないのはよ~く分かってますもん。だからちゃんとスヌーズ機能も付いてるんです」

「……はい? スヌーズ? 何が?」


 何を言ってる? アラーム消しておいてスヌーズとは?


「え? さっきしましたよ? 結ちゃん目覚ましのスヌーズ機能は、【キス】ですよ? 名付けてスヌーズキスです!」

「お、おぉう……」


 そんなスヌーズ聞いた事ないんだが!? いや、でも……はい。最高です。


「大成功ですねっ! アラームが鳴る前に全部消しておいて正解でしたっ!」

「計画犯かよっ!?」


 アラーム んじゃなくて、してたんじゃねぇか!


「それにしても……キスで起きてくれて良かったです。もし起きなかったら……はい、ではご飯食べましょう。晃太さんも顔洗ったら来てくださいね。私、ご飯とかよそってますから」


 ……起きなかったら何なんですかね!?

 聞きたいけど聞けないっ! 今度寝たフリして見るのも……いや、それはなんかマズイ気がするからやめとこう。


 ◇◇◇


 ベッドから出てすぐに顔を洗い、結の部屋に行く。テーブルの上には朝食の準備がしてあり、後は食べるだけ。


「「いただきます」」


 二人で一緒に手を合わせてそう言うと、俺はすぐに箸を伸ばしてふりかけのかかったご飯をおかずと一緒に口に頬張る。うん、相変わらず美味い!

 一緒に暮らし始めた頃よりなんだか上達してないか? 味がどんどん俺好みになってる気がする。


「ふふっ、晃太さん? ここ、ふりかけが付いてますよ? 今取りますね」

「ん~?」


 声に反応して結の方を振り向く俺。目に映るのは俺の顔に向かって指を伸ばしてくる結。

 次の瞬間、結の伸ばした指が俺の口の中に入った。


「んぁっ……ゆ、指……舐められちゃった……」


 そんな事を言いながらすぐに手を引き、頬を染める結。その姿が可愛くて無意識のうちに距離が近づく。


「結……」

「晃太さん……んっ……」


 まだ飯の最中なのにキス。おいゴラァ! 何してんだぁ? って思うかもしれない。俺も思う。けど、許してくれ。

 俺と結が付き合ってから、こんな風にイチャイチャできるのはこの部屋しかないんだから。

 だって──


 ピンポ~ン♪


『結! 晃太! 起きてる?』

『先生うるさい……。ボク低血圧だからもっと静かにして……』


 チャイムの音と共に聞こえる二人の声。

 それと同時にお互いに唇を離す。


「来たか……」

「来ましたね……」

「「はぁ……」」


 つい先週まではこのアパートに住んでるのは俺と結だけだった。

 けど今は、下の階に柚と秋沢も住んでいる。

 しかも結にライバル宣言をして。


「結、玄関開けるか?」

「いいです。放っておきましょう。まだ朝食の最中ですし」

「だな」


 その後は、玄関の外で騒ぐ二人を完全に無視して朝食を食べ、俺は仕事の準備。結はすでに準備が終わっている為、茶碗を洗っている。

 そしていつも部屋を出る時間になり、俺と結は二人の部屋の間でもう一度キスをすると、別々の玄関から外に出た。


「おはようございます」「おはようさん」


 さて、今日も用務員の仕事頑張りますかね。




 こんにちは! 亞悠です!

 お待たせしました。二部です!

 二部は糖度高めで行きます!

 そしてこちらカクヨムコン参加作品です。

 目指せランキング入り! 目指せ大賞! 目指せ書籍化!で頑張りますので、応援よろしくお願いします!

 面白い! 笑える! 可愛い! 等と思って頂けましたら、☆で称える、作品フォローなどして頂けますと、とても嬉しくて力になります!

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