第41話 「ナニコレ」
夕飯の最中、ふっと思い出したかのように結が言った。
「そういえば、来月修学旅行があるんですよ。聞いてました?」
「んぁ? あぁ、なんかそんな話も聞いたような? あってもただの用務員の俺には関係ないしな。てか秋なんだな。俺が通ってたとこは春だったんだけどな」
「そうなんですか? いつも秋みたいです。それで私が修学旅行に行ってる三泊四日の間のご飯なんですけど、作り置きしてタッパーに入れておくのでそれを食べてくださいね。日持ちしにくいモノからメモを貼っておくので」
「いや、さすがにそこまでは……」
「だめです。じゃないとまたあのお弁当屋さんに行くじゃないですかぁ……」
えっと……これはヤキモチでいいんだよな? なんかプクゥしてるし。
正直言うと、こうしてヤキモチ焼かれるのは嬉しいし可愛いんだよなぁ……。
「わかったよ。じゃあ……頼むな?」
「はいっ!」
俺がそう答えると結は強く頷いた。今日はポニーテールにしてるから、その結った髪も一緒にピョコンと揺れる。馬の尻尾とはよく言ったものだ。
「晃太さん、明日からどうするんですか?」
「ん? 明日から? なんかあったっけ?」
特に何もないと思ったけど……。なんかあったっけ? 秋の全校清掃活動はまだ先だし、文化祭も修学旅行が終わってからだよな? つーか修学旅行終わってからすぐに文化祭って結構ハードじゃね? 1ヶ月ちょいしかないぞ? 若いから大丈夫なのか?
後はなにも思い付かないな……。
そんな事を考えてた俺の思考は、結の次の言葉で真っ二つになる。
「秋沢さんですよ。晃太さんの事を好きって自覚しちゃったんですよ? きっとアタックしてきますよ?」
「ま、まさかぁ! そんなタイプには見えないけどなぁ」
「わからないですよ。そんな子に限って猛アタックしてくるかもしれません。あ、私が修学旅行に行ってる間とか危ないかも……えぇ〜旅行までもう少ししかないのに」
「いやいやいや! 考えすぎだって!」
「……うん、決めました!」
「何を!? 結が何か決めた時ってなんか恐いんだけど! ちゃんと教えてくれるんだよな?」
「もちろん!………ナイショです」
だと思ったよ……。
そして明けて次の日の昼。
「……一緒に食べる。いい? おかずも作ってきたから食べて」
ホントに来たよ。しかも差し入れ持参で。
いやぁ、ホントに結の言うとおりになったな。
そして秋沢の問いに答えたのは俺じゃなかった。
いやね、俺がちゃんと返事しようとしたよ?
けどそれより早く口を開いたんだよ。俺の隣にいる子が。
「えぇ、いいですよ秋沢さん。私もご一緒させてもらいますね」
「……なんで?」
「なんでって……。お互いに同じ人を好きになって、その気持ちを知ってるのに二人きりにさせると思います?」
「思わない」
「ですよね」
「「………」」
いや、なんか話せよ。ほら、とりあえず座ろうぜ? な?
と、その時──
「こ、晃太? 修学旅行中のあんたの仕事について書類持ってきたの。そのついでにね、ほんとついでなんだけど、たまには一緒に食べ……ナニコレ」
今度はお前かよ。柚。
ナニコレって ?俺が聞きたいよ。
━━いつも読んでくれてありがとうございます。
面白いよ! もっと読みたいよ!って思っていただけましたら幸いです。
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