第40話 「むふん♪」
「ただいまーっと」
「はい、おかえりなさい」
俺が部屋に入るとエプロン姿の結が出迎えくれる。良かった。今日はゴスロリじゃなかった。アレはいけない。大根おろしの如く理性がゴリゴリ削れてしまう。
ちなみに喫茶店からはあの後すぐに出た。秋沢の前で結と一緒に帰るわけにもいかないので結は先に帰り、俺は少し遠回りをして帰ることに。
秋沢の家はすぐ近くだけど念のためにな。
そして柚とは駅の前で別れた。妙に肩を落としてたから声をかけたけど、「一度霧散した決意をまたかき集めてくるわ……」とか言いながら駅のデパ地下へと向かっていった。
それを見送っての帰宅ってわけだ。
「晃太さん今日は大変でしたね。けど、お疲れさまでした」
「ん、ありがとな。これでスッキリさっぱりって所かな。まぁ、新しい問題が出来たわけだが……」
俺は会話を続けながら靴を脱いで部屋に入る。いつもの場所に鞄を置いて、上着をぬいでハンガーにかけた。
「そうですね。またライバルが増えちゃいました」
「ライバルって……ん? また?」
「だってあの子も晃太さんの事好きなんですよ? ライバルですよぅ! 前におねえちゃんから話を聞いた時には怪しいと思ってたんですけどね。まさかこんな早く……やっぱりあれはわざと? う〜ん……あ、またってのは気にしないで下さい。なんでもないですから」
「気にするなって言われると逆に気になるんだが……。むしろ気になる事ばかりなんだが?」
「えっ、気になるんですか? 気になるようになったんですか!?」
「おい、なんだその言い方は」
何故か笑顔になって俺に寄ってくるとそんな事を言い始めた。
いや、なんでそんなに機嫌よくなってんの? 気になるって言っただけだぞ? あと、そこにいられると着替えれないだけど。Tシャツに手をかけた状態で俺の動き止まってるんだけど気付いてる? ちょっと結さん?
「むふん♪ 気付いてないですよねー? 晃太さん、前まではそんなに私が言った事を気にしたりしなかったんですよ? 一歩引いてるっていうか、一線を引いてるっていうか、そんな感じで。それが今は気にしてくれてますよね? それがとっても嬉しくて♪」
「そ、そんなだったか?」
「そんなでしたっ! ちょっとだけ寂しかったんですよ? だからこれからはもっと気にして何でも聞いてくださいね! スリーサイズだって答えちゃいますから! 上から……」
おぉぉいっ! いきなり何言い出そうとしてんの!?
「ちょっ! 結よ待て! それは今聞いてないぞ!」
「知りたくないです?」
「……ノーコメント」
「それはズルい答え方です。どっちですか?」
「だーもう! ほら、俺は着替えるから自分の部屋に行ってなさい! じゃないと目の前で着替えるぞ?」
「ぜひっ!」
おい、さらに一歩踏み出すな! なんで目がキラキラしてんだよ! 普通逆じゃね!?
「いやいやいや、ぜひっ! じゃなぁーい! ほら行きなさい!」
「はぁい。わかりましたー。じゃあ私は夕飯の準備に戻りますね。あっ」
一度後ろを向いて部屋に向かおうとした結が振り向いてぼそっとこう言った。
「ちなみに私、Eですよ」
「んなっ!?」
「じゃあ、着替えたら教えてくださいね」
家でも節度を守ってくれませんかね?
━━いつも読んでくれてありがとうございます。
面白いよ! もっと読みたいよ!って思っていただけましたら幸いです。
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