第42話 「にゃん」「みゃあ」
この狭い倉庫に男が一人の女が三人。
まぁ、狭いけどそれなりに快適に作られているんだが。
ちなみにテーブルに備え付けてある椅子は二つしかない。後は二人掛けのソファーが一つ。ソファーの前にはテーブルなんてなく、弁当を食べるには手に持ってなくちゃいけない。
だからみんなで一緒に座って食べるなんてのは無理であってだな……。
「せまい……」
学生同士ってことで結と秋沢に椅子をゆずり、俺と柚でソファーに座る予定だったのだが、何故かソファーに座った俺の右には結が。左には秋沢がいる。そして目の前には椅子に座ってモソモソと弁当を食べながらこっちをジト目で見ている柚。
「……ちょっとあなた達、昨日節度って言ったばかりだと思うんだけど?」
ほんとそれな。
「あのねおねえちゃん、これは隣に座ってるだけなの。だからなんでもないの」
なんでもあるわ。
「そう、ボク達はただ座ってるだけ。ちょっと窮屈だから接触面積が増えてるだけ。心配しないで。少しくらい胸が当たってても全然気にしない」
気にしろ。
「窮屈なら動きなさいよ! それに秋沢さん、あなた昨日初めて恋を知ったような感じだったのにその攻め方はなんなの!?」
「とりあえず人気な少女マンガとラブコメの本を買って読んできた。おかげで寝不足。ああーねむくてふらふらするーこれはもうだめだー倒れそうー。ぱた」
「「あっ!!」」
「おいこら」
後半めっちゃ棒読みで秋沢が横に倒れて俺の左膝の上に頭をのせてきた。
サラサラの髪が俺の膝の上に広がる。そして体の向きを真上に変えると両手をグーにして顔の下に持ってくると、俺の顔を見ながら真顔でこう言った。
「にゃん」
おっと……。なんだこれ。可愛い。棒読み無表情なのが逆にいい。
「ちょっと秋沢さん! 晃太さんになにしてるんですかぁ!」
「太もも枕を堪能中」
「ずるいですっ!! あぁ……私も大声をーだしたらぁー目眩がぁー。ぱたり」
今度は結が右膝に倒れてきた。長い髪が俺の膝から落ちてソファーに流れる。
「みゃあ」
はい可愛い。
少し無理をしたのか、ほのかに頬を赤く染めてるのがいいね。
現在、俺の両膝には美少女が二人横たわっている。そして俺の両手は、いきなり倒れた二人の弁当と自分の弁当でうまっている。
というわけで、
「柚、なんとかしてくれぇ~」
俺は助けを求めた。
いや、こんなんあかんでしょ! 何もしらない奴が見たら即通報からのクビですよね!? 勘弁して! それにこういう時って誰かくるんだろ? 俺知ってんだぞ!
【ガチャ。ガチャガチャガチャガチャ】
ほらぁぁぁぁ!!
俺は急いでそのままソファーから立ち上がる。
「きゃあ」
「わわっ」
二人が体勢を崩してソファーの上に転がるが、そっちには目を向けずにすぐドアに視線をうつす。そこには……
「何ビビってんのよ」
「お、お前なぁ……」
ドアの近くに立った柚がノブをガチャガチャさせていた。良かった……。俺のクビは繋がった。
「何よ。だらしない顔してたくせに。これに懲りたらもう少し考えなさいよね?」
「いや、俺は何もしてないだろ」
「何もしてないのが問題でしょうが。黙って私の隣の椅子にくれば良かったのに……」
「グゥの音もでねぇ」
「でしょ? まったく、若い子相手にデレデレしちゃって」
「デレデレはしてねぇよ!? はぁ、まぁいい、飯の続きだ。ほら、俺は椅子に座るからお前ら二人はソファー……で……え?」
俺が振り返ると、結と秋沢がソファーの上で絡まっていた。
なんつーかこう……なんでそうなった? って聞きたくなるような格好で。
さて、詳しく説明しよう。
まず、秋沢が下側に仰向けで寝そべり、その上に結が被さっている。その状態で結の手が秋沢の服を掴んで捲りあげられたおかげで秋沢のヘソが見え、結は背中が見えている。そしてお互いの足がお互いのスカートをめくっている感じだ。
ちなみに秋沢は白。結は上下とも薄いオレンジだった。
「ちょっ、ちょっと何見てんのよっ!」
俺が目の前の衝撃的な光景に固まっていると、そんな声と共に後ろから回された柚の手のひらによって俺の視界は遮られた。
━━いつも読んでくれてありがとうございます。
面白いよ! もっと読みたいよ!って思っていただけましたら幸いです。
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