閑話3ー2 【柚と失敗】

 私は晃太に別れを告げた。

 笑いながらいつもどおりの私で言えたはず。



 帰り道、普通に話してる中で流れで呟いた言葉。だけどお互いに足は止まる事はなく歩いていく。

 晃太は、「あ〜」とか「ん〜」とか言いながら首をかしげてる。

「嫌だ」とか「なんで?」とか言ってくれるかな? そしたらきっと……。


 やがて晃太がこっちを向いて一言。


「まぁ、柚がそう言うなら……わかった」

「ん、ありがと」


 その一言で私たちの関係は終わった。十年の片想いと半年間の付き合いが、たった一言。ほんの五分で終わった。

 それから私達はまた、ただの幼馴染みに戻ったの。


 あれから八年。

 高校を卒業してからは、メッセのやり取りはたまにするけど会うのはお盆と正月くらい。

 晃太に彼女の出来た二年前からはそれもなくなり、もう完全に振り切って忘れようとした時に今回の話。

 結にはまだ話してないけど、うちの親と晃太のご両親で盛り上がってる晃太のお嫁さん計画。

 最初は当事者無視で何を……って思ってたけど、結が晃太の事をずっと慕ってるのは私もお母さんも気付いてた。だからだろうけど、お互いの親達の間では結推しなんだろうな。「ちなみにあんたはどう?」なんて、私はオマケみたいな言い方をされたのもそのせい。


 そのことで、またしても私の心はざわついてしまった。

 一途と言えば聞こえは良いかもしれないけど、端から見ればただの重い女だよね。今更……。

 だから私はこう言ったの。


「私は彼氏いるから……」


 って。


 そして晃太が帰って来てからはどんどん物事が進んでいった。結の引っ越しからアパートの改造まであっという間に。

 私は仕事が忙しいって理由であまり関わってこなかったけど……本音は結に嫉妬しちゃうから。


 そして今の生活になった。

 きっと昔みたいに振る舞えてるはず。そう思ってた。あの飲み会までは。


 いや、ほんとなんなのよも〜うっ!

 あんなこと言うつもりなかったのに! お酒こわいっ! ヤバいわ……絶対バレたわ。いくら晃太が抜けててもこれはきっと……。比奈にも散々言われたし、学校で会うのも気まずいじゃないのよぉう……。


 そう思って晃太から逃げてたのに何よこの女。いきなり「真峠さんは?」って。晃太のなんなのよ。あーほら! 晃太来ちゃったじゃないのよ。気まずいのよぅ……ん? なんで秋沢さんも一緒にいるの? まぁいいわ。それよりもこの人なんだけど……え? 秋沢さんのお姉さん!? しかも晃太の元カノ? この女が!?

 へぇ〜。ふぅ〜ん。ほ〜ん。

 胸は……あんまり変わらないわね。うん。


 ヨリ、戻しにきたのかなぁ? ……やだな。

 聞いてみようかな……聞いちゃった!

 晃太はヨリ戻しに来たとは思ってないみたい。けど、なんか怪しいんだよね……。


 って……え? あの話聞いても私の気持ちに気付いてなかったんかぁーい!! 相変わらずの鈍さね。それに汗の匂いって何それ! 全然覚えてないわよ!? ひぃぃ、恥ずかしすぎるぅ……。




━━いつも読んでくれてありがとうございます。

 面白いよ! もっと読みたいよ!って思っていただけましたら幸いです。

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