恋とは

こめ おこめ

過去にも同じような事例は確かに存在した

 いつもそれのことばかり考え、会えるのならいつも一緒にいたい。

 この感情はドラマや小説によくあることだし、そう感じている僕自身もそれを恋だと確信している。

 

 放課後、友人と一緒に帰る時間すら惜しいと感じてしまい、早々と一人で家に帰る。その間もそれのことばかり考えていた。

 帰宅後、PCをつけてとあるアイコンをクリックする。

 タイトルコールが始まり一つのゲームが始まる。僕はそれに夢中になっていた。


 内容はエロゲー。シナリオを読み進め選択肢によりヒロインを攻略していくタイプのものである。


 僕はこの中のキャラではなく作品に恋をしていた。

 友人にお勧めされて借りたゲームであったが、初めてのエロゲーだったのでまずそれだけでかなりの衝撃だった。

 それにくわえ他のゲームよりも凝ったシナリオ、キス以上の出来事は経験の乏しい僕の心をとらえるのには充分であった。


 何度も繰り返し同じシナリオをプレイし、何度もお気に入りのボイスを聞いた。

 しまいには内容を暗記するほどにまでいたった。

 それをプレイしている間はかなり幸せだった。その世界観に没入し、それ以外のことが見えなくなるほどに。

 シナリオを終えるたびに感動し、涙を流した。その後しばらくしてこれに慣れてしまい感動できなくなる日が来るのではないかと、そう思うこともしばしばありそれが怖くてたまらなかった。

 

 ある日、そのゲームの会社が新作をだすとの発表があった。僕は胸を弾ませてそれを待った。あのゲームの同じ会社がだすのだからきっと素晴らしいものが発売されるのだろう。


 発売されたゲームはとても素晴らしいものであった。そのゲームも何度もプレイし、涙を流した。

 こうして僕はその会社のファンになった。

 毎年ではなかったがゲームは出続け、どれも素晴らしく感じている。


 社会人になりゲームのできる時間は減った。しかし今も思い出す度に胸は弾むし、プレイしたくなる。しかし昔ほど一緒にいたいと思うことはなくなってしまった。このことがなんだか寂しく感じる。倦怠期という奴だろうか?


 僕はバレンタインやクリスマスなどはこの会社のゲームをプレイしながら過ごすことにしている。

 人に話したらもちろん笑われるし、ドン引きもされるだろう。

 しかしこれをすることで心は十分に満たされ、僕の人生は確かに豊かなものであった。


 この恋と感じているものはこれを書いている今も続いている。最近では二次創作を漁り始め、そのうち自分が二次創作に手を出す日も近いだろう。

 恋は心の原動力になり、気力になる。それが人間ではなく作品であったため色あせることなく、変わらないままを愛し続けられるのはとても良いことだととらえている。


僕はきっと来年も、再来年もその次の年も同様の行為が続いているだろう。その時もこの幸せが感じられることをせつに願っている。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋とは こめ おこめ @kosihikari3229

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る