30歳独身、処女ですけど?何か?

あいる

~運命の人は難病~

 恋愛小説をたくさん読んでいるけれど私はまだホントの恋愛ってのを知らない。


 キスだってしたことあるし、デートも何度も経験しているけど、ただ皆が楽しそうに恋バナをしているのが癪に障るから特別好きでもない人を選んでいるだけ。


 そんな私がどうやら、恋をしたみたいだ。


 その日の午後、学校の帰り道で車椅子を押してあるく男性を見かけた。

 母親なのだろうか、時折話しかけながら優しそうな笑顔にズキュンと心が鳴った。


 高校3年の夏休みは忙しい、塾の夏期講習は毎日のようにたくさんの課題を出してくる。

 模擬試験も毎月のようにおこなわれる。


「ったく、早く受験終わんないかな~」

 他校の生徒である花蓮かれんは机に頬をついたままうんざりとした表情で私に話しかけた。

「だよね、大学に行ったらどんなに楽しいんだろうって思ってるけど、単位とかめんどくさいんだろうね、でも受験生よりマシだよね」


 その日の個人授業にその彼が教師としてやってきた。


 あの車椅子を押していた人だ。


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 小説投稿サイトにこんな小説を投稿しようとしている私は30歳

 恋愛経験ほとんどナシ、そして処女ですが?何か?


 婚活パーティーも飽きてきたし、私の休日といえば、テレビを観るか本を読むしかない。

 自粛生活なんて、特に以前とはまったく同じ。

 仕事はとりあえず医療関係だから毎日仕事にも行くし、変わった事といえばマスクが手放せなくなっただけだ。

 もちろん以前から仕事中はマスクをしているし、ただ休みの日まで外ではマスクしてなきゃ歩けない日が来るなんて思っても見なかった。


 マスクって綺麗な人が付けるとかえってミステリアスな感じになるから不思議。

 それなりの人もそれなりに見えてしまう。


 そんなある日、私は運命を感じる人と出会った。


 私が勤めている薬局に彼はやって来ました。

 彼の病気は難病指定されている「クローン病」医療事務なので詳しいことは分からなかったけれど、原因不明だし、完治も望めない大変な病気であることだけは知っていた。


 出会いのきっかけは処方された薬を車に運ぶ手伝いをした事だった。

 クローン病では「エレンタール」という栄養剤を処方されることが多い、その箱だけでも3箱、他の薬もたくさんあるので私が一緒に運ぶ事になった。


「毎回こんなにたくさんの薬大変ですね」と駐車場までの道で話しかけた。

「生きていくだけで大変だし、恋なんて出来ないです」

マスクはしているけれど、なかなかのイケメンだと思った。


 その言葉を聞いた時に私の心の中で『そんなことないと思う』って思う気持ちが芽生えた。


 彼の名前は、橋田 あおという名前だった。もちろんカルテで確認済だ。

あおって珍しいし素敵な名前ですね」

 そう言った私に笑顔で答えた碧君。

「なんか、親がその頃読んでた小説に出てきた主人公の名前から取ったらしいです、僕も気に入ってはいるんですけどね、クローン病も最初はすごく嫌だったけど、なんかスターウォーズみたいだろって掴みのネタに出来るほどになったし」


『私も気に入ってます! 素敵な名前』って思わず心の中の気持ちを口に出しそうになっていた。


モスグリーンの軽自動車が彼の車だった。後ろの座席にダンボール箱を詰め込みながら微笑んだ。

「ありがとうございました、助かりました」と言いながら軽く手を振って彼は車を発車させた。


 その日の帰り道に寄ったコンビニでお弁当を選んでいる彼の姿を見かけた。


「こんばんは」


 思い切って声を掛けた、最初は気が付かなかったみたいだったけれど「薬局で……」と言いかけた私に気がついたみたいで「今朝はありがとうございました、この近くに住んでるんですか? 」と聞いてきた。


「2ヶ月くらい前に引越して来たんです、すぐ近くのアパートに住んでます、さつきハイツです」


「さつきハイツなら、僕の住んでるボロいマンションからすぐです」


 そういえば、そのマンションの下見をしたことがあった。

 ボロいとは言ってるけど、中はとても綺麗にリノベーションされていたし、ホントは入居したかったけれど予算オーバーで断念したところだった。


「私も下見にだけは行きました、確か203号室だったと思います」


「203号室?そう、そこです、僕の住んでるところ」

偶然にも同じ部屋を見ていたのだ。


「素敵な部屋だったことは覚えてます、ただ予算オーバーで……」


「確かにね、だから僕も結構切り詰めた生活してます」と苦笑いしていた。


 私は男性経験もほとんどないし、いやまったくないし彼氏だっていないおひとり様生活だ。

 決してモテないわけではないのだけど、きっかけがなくて30歳になってしまってる。

 こんなに話が弾んだのはきっと高校生の時以来だった。


「今度、よかったら僕の部屋に来ませんか、あっ、変な意味じゃなくて」そう慌てて話す彼に私は頷きながら言った

「喜んで、あの部屋を見てみたいし」


 それから約1年、今では恋人となった彼の病気はなかなか良くはならないし、見ているのが辛い時もあるけど、支え合って生きていこうと思う。



 そして、この2人をモデルにした作品を小説投稿サイト、カクヨムに公開しようかと思ってる。

 碧君には秘密ですけどね。


 ~了~


*あとがき*

いふさんこんなラブコメっぽい作品でよかったでしょうか?💦

ちなみに「クローン病」は国の難病指定の病気です。

たくさんの薬や、注射も必要ですが、通常の恋も結婚も可能です。

先日、20歳の素敵な患者さまの車まで一緒に薬を運ぶお手伝いしました。

なのである意味妄想小説です( ˊᵕˋ ;)💦


お読み頂きありがとうございます。

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30歳独身、処女ですけど?何か? あいる @chiaki_1116

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