6話目「白太は何故か夕美映町一帯に点在する御地蔵様に向かって、謎の口笛を唱えてるうぅ!?」



「そういう俺も、実をいうと隠し玉持ってんだよな〜〜! シロが学校についたら、今朝新聞配達の時に何かを見たんだよな? そうだよなシロ? なっ!! それとはまた別のジャンルの話だけど、聞いたらみんな絶対驚くぜ!」


「あ、う、うん、……そうなんだよ!! さっきの人もいきなり姿を消したし、全身が黒だったから、黒勾くろまが怪人かいじんってこと、低くはないかもね。それよりも、なんか、す、すごくビクビクしてたけど、朝見たのは、そ、それよりも、もお、もっと、もおっと超超瞬間、稲光ックリなぐらい、ぉ、ぉ、お。おっ球、消ッターなことだったからね!! へえー、竜也も誰かに話したい秘密の情報持ってんだ〜〜!!」


超超瞬間稲光ちょうちょうしゅんかんいなビックリと、おっ球消たまゲッターて、なんだ………)。


 竜也とはそう思ったに違いないだろう。……………

 


 白太と朱我利竜也と耳織木ノ美は、その後も子供らしい、小学生がいかにも話題にするようなTVのバラエティ番組やYouTubeのタレント、アニメ・漫画・ゲーム、カードゲームなどの〔クドい…〕芸能やサブカルチャーの話になることはなく。



 竜也と木ノ美はなるべく尽くしていた



 白太はウルトラマンや戦隊ものの話になると顔が赤くなるぐらい興奮して、吃音きつおんになりながらも詳しく解説したがる。しかし、それ以外の類いの会話は苦手というより「いき過ぎた過剰反応かじょうはんのう」を示すぐらいだ。


 だからそうならないように2人は終始気を配っていた。


 顔が少しだけ真っ青になる、みんなが周りにいてもその場から一気に「少年ダッシュ!!」をするのは。梅雨の時期に苦手な蝦蟇がまがえるが姿を現し出した時である。


 それとはもちろん異なるが、にも顔が真っ青になる「自分では通用しない話題」になった時。その環境化では友達たちが話をしている間でさえ、歩いている時でも、ひとみを瞑ったままただ聞き耳を必死にそばだてる。自然とそういう体勢にならざるをえない。


 ところが終いになるとひとみは閉じていたまま眠り、翌日の〖朝〗になるまでそのまなこは全く開くことが出来なくなる『不可解な働き』が起きてしまう。


 何故なのか。


 一見するとただの子供の成長期にみられる特有の。……にするには無論、とても無理がある話しだ。科学者も理解に苦しみ首をひねるであろう『謎の免疫の拍動はくどう』。



 そんな友達の会話に切実にすがりつく素の姿。ひび割れたガラス細工のように触れればもろく、ボロボロと。いたいけな薄幸はっこうの少年、白太を。


 見つつも見ない振り。ましてや見放し、捨てる? そんな冷酷非道極まりない行為、絶対にやっていいことなんかある訳ねえ!? だろ!


 俺こそが。白太は俺が、守るとも決めたんだから。そんな行為を仰ぐ同じ世代の子供たち、そして、バカな大人たち。そんな奴らは許されないことだし、俺は、絶対に許さない。


 やらなくてはいけないんだ。それがたとえ仮に白太とは関わりのないことだとしても。俺は俺で自分なりに決めてるんだ!


 そのくらいは思っていたのであろう。そういう気負いが竜也には、あった。


 木ノ美も、ヒーローものを話す時だけは白太に萌え萌えビームを出しながら、うんうんと頷き。ふむふむと賛嘆さんたんする。常に穏やかな口調を心がけては、白太をまるで心のどこかで「本当の弟」のように可愛がって自分も満足しているようだ。



 そして、戦隊物シリーズの武器・アイテムの歴史で盛り上がっていた三人は、夕美映小学校の校庭のグラウンドのネットもみえ始めた辺りから、夕美映川の土手を降りる。田舎町らしい畑と幾つか道の外側にある納屋のあるカーブを、通りすぎる。


 学校への最後の緩やかな放物線の道の途中「にも」ある、これはこれは幾分背の高い御地蔵様。いつの間にか白太は、その御地蔵様たちへピューヒュルルル~~、天然に自然と、妙な口笛をするようになっていた。


 只でさえ御地蔵様を洗ってあげたりしない。いつものようにその様子をみていた竜也と木ノ実には、その白太のする口笛の意味が御地蔵様からどんなご利益、また花供養のような捧げる意味があるのか。理解出来ないのは当前のことだ。


 ではあったとしても〖鳳凰ほうおう〗を呼ぶかの如くまさに真剣そのもので口笛を吹き続ける白太に、二人もなぜか安心していた。


 それを、ただいつも黙々とひたむきに一人吹いている白太は、いったいないさー。と、思うことは、べーーつに、なんくるないすさーーー〔!?? なぜに沖縄弁なんや?!!)


 と、竜也と木ノ実は心のなかで『後に続け!』とばかりに口にしてした………!!!

〔いや、そんなふうにいうする訳ないって! ……………ナンダヨ、コレッ。お前もな…〕。


 竜也と木ノ実は夕美映町に多種多様に存在する御地蔵様に「なにか」を『手向ける』白太に、自分はまだ小4と幼いし知識もまだまだだが、白太は同年代の子供のなかでも幾分弱い立場の子。


 だとわかっていることに関しては、他の子らより偉い子ちゃんな二人である。


 でもその一方で彼らの見る白太自体がなんだかちょっと不思議で、謎も多い。だがそれを唱えているとき、二人は白太という存在の意味を知らない、ばかりか。そのときの『白太』は、普段の純朴な「白太」を、とうに・はるか。超えてゆく。


 それはまさに「天高く昇りて燦然さんぜんとキラリ閃く太陽のように」。さながらみんなに、明るさ・恵み・光をくれる



『輝かしいわだちへと導く存在なのだ』。



【因縁】この物語ではそれが、主に『二つの因子で存在する』。どの事物にもいえることだが、森羅万象には、複数の個別の因子が幾つもなかにあり、それぞれが枝分かれしていくものだ。


 どこの都道府県・市区町村にも存在しない、この夕美映町にだけ『古来からの蒼い稲穂の揺れていた』語り草のなかで謂われ伝承されてきた特殊な呼び名『こと』。


 その流れの発端にあたる『こと』から、そのなかにも二つの因子「言葉」・「言霊」が、昔々の人々から生まれ、受け継がれてきた。という歴史がある


「言葉」とは別の『言霊ことだま』。それに付随するものとして、御経。それから呪術……といったものまで流れ、それらはまた派生し、緻密になってゆく。



 もちろん。白太の〖口笛もおもいを込める〗もの。



 枝分かれの集団から大きく離れている、神秘だけが宿る彼の〖祈りの口笛〗。そのエナジーには人はみな必ずゆき留まる。無垢で可愛げで・暫時ざんじと魅了されてしまう。彼ら自身の宿命も『のぞみ』、から。変われる──。


 しかしそこまで到底ゆけずじまいー……。白太の持つ不可思議なちからも感覚的以上に覚えるのは無理難題なのが、竜也。木ノ実。そのの夕美映町の町民たちだー、残念ガッテン!

〔……………NHKも勝手に使用するな! 国営だぞ!!! ……………〕


 夕美映町の民は。心の底から白太に温かい眼差しで、頷き・納得し・慕い続け、そして、見守る。ずっと待ち焦がれている。待ちわびていたのだ。



 ────それらは、これからまた『相違する別の放物線を』描いてゆくかのように────



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る