復讐

渡瀬 富文

復讐

 同棲中の彼が、可愛らしい女性と腕を組んで歩いていた。浮気現場である。

 ショックだった。薄々感づいてはいたけれど、目の当たりにした衝撃は、桁違いだ。


 許せない。

 許さない。


 私は復讐を決意した。





 生臭い腐臭が漂う部屋。

 包丁の刃を腹に当て、狙いを定める。

 ぶすり。力を込め、一直線に切り裂く。

 ばっくりと裂けたそこから、赤黒い血と一緒に、でろりと内臓があふれ出した。

 できるだけ丁寧に掻き出し、袋へ詰めていく。

 腹を刺す。切り裂く。内臓を掻き出す。

 何度も、何度も。背骨や肋骨が見えるまで、丁寧に。





 準備を終えた私は、彼の部屋に全てをまき散らした。

 捌いたばかりの魚。その数20尾。

 身も、内臓も、血も、全部だ。


 しっかりと戸締りをし、私は家を飛び出す。

 もちろん、もう戻るつもりはない。



―了―

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復讐 渡瀬 富文 @tofumi

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