復讐
渡瀬 富文
復讐
同棲中の彼が、可愛らしい女性と腕を組んで歩いていた。浮気現場である。
ショックだった。薄々感づいてはいたけれど、目の当たりにした衝撃は、桁違いだ。
許せない。
許さない。
私は復讐を決意した。
※
生臭い腐臭が漂う部屋。
包丁の刃を腹に当て、狙いを定める。
ぶすり。力を込め、一直線に切り裂く。
ばっくりと裂けたそこから、赤黒い血と一緒に、でろりと内臓があふれ出した。
できるだけ丁寧に掻き出し、袋へ詰めていく。
腹を刺す。切り裂く。内臓を掻き出す。
何度も、何度も。背骨や肋骨が見えるまで、丁寧に。
※
準備を終えた私は、彼の部屋に全てをまき散らした。
捌いたばかりの魚。その数20尾。
身も、内臓も、血も、全部だ。
しっかりと戸締りをし、私は家を飛び出す。
もちろん、もう戻るつもりはない。
―了―
復讐 渡瀬 富文 @tofumi
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