現実

@reflection9z

知るということ

 僕は逃げた。

 心がそれに耐えることができないから。

 だから逃げた。

 しかし、避けても避けてもそれは目の前に立ちふさがる。

 俺を見ろと。

 僕はそれを直視できなかった。

 生まれてから18年。

 確信していたそれは時間の経過とともに疑念に侵され、気付いた時にはどうしようもなく醜い姿に変わっていた。

 行動さえしていれば疑念は解消されていたかもしれない。

 でもできなかった。夢を見ていたかったから。

 確認さえしなければ、確証がなければ、それはただの気のせいでいてくれた。

 だから逃げた。

 しかしいつかそのツケは払わされる。清算しない選択は存在しない。

 だから選ばなくてはならないのだ。

 拾うのか。捨てるのか。

 拾ったならば、その先それと向き合わなければならない。

 捨てたならば、そこで自分の何もかもは無となる。

 知るということは怖いことだ。

 知らないということは怖いことだ。

 知れば辛苦の代償に続きが手に入る。

 知らなければただ暗闇にのまれ、いずれ消える。

 消えた先に先がないことを僕は知っている。

 今こそが最後の可能性であり分かれ道。僕に残された最後の蜘蛛の糸。

 ここで逃げれば後はない。もちろん戻ることは許されない。

 選べ、選べ、選べ。

 誰かが言った。暗闇などは存在せず、そこにあるのは無知であると。

 この暗闇が晴れるのならば。この辛苦に耐える価値はあるかもしれない。

 怖いけど、それでも終わるのは癪だから。

 向き合おうじゃないか。

 向き合って立ち向かって時々休憩すればいい。

 いつかその辛苦を乗り越えて、未来が見れるはずだ。

 信じるのは過去の自分じゃない。今の自分だ。

 踏み出すその先で今の自分が生まれていく。


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

現実 @reflection9z

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る