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こうして今の教会のすぐそばの川岸近くに、
そうなると実際の建築はその後ということになるから、まだ十日ほどありそうだった。
その十日の間はちょうど雨が降り続き、しかもバケツで水をひっくり返したのではないかと思われるような大雨の日もあれば、さらに風も増して暴風雨の日もあった。
聞くと日本では、だいたい九月から十月にかけて時折暴風雨の日があるのは年中行事だそうだ。だが、そんな大嵐の翌日は、あたかもノアの大洪水の後に『
そしてようやく雨が続くような日々が終わった頃に、
その時期に、ヴァリニャーノ師はとにかく日本語を完全
そこで、
私のほかにも数人、修道士が日本語を学んでいたが、その中でもいちばん若いジョアン・ロドリゲスという二十歳の神学生はこの年にイエズス会に入会したばかりだということだった。商人である父親に連れられて十四歳でポルトガルを離れ、ゴアやマカオを経て三年前に日本に来たが、都や府内で教会に通ううちに召命を感じ、イエズス会の門を叩いたのだという。もうかなり日本語に精通しているようだったが、私と共に養方軒パウロに鍛えられて、さらに日本語力を磨きたいとのことだった。
マカオで日本語を学び始めてから一年以上になるが、やはり日本人から学び、日本語の中で生活していると上達は違う。ほかにも主日のミサの後などは、集まって来た臼杵の町の
養方軒パウロは我われへの日本語特訓のほかの時間は、よくヴァリニャーノ師の部屋に赴き長時間出てこないこともしばしばだった。
秋が深まっていくと、
司祭館の方は全くの日本式建築であった。これまで長崎や有馬、そして府内の教会なども皆日本式建築だったが、それは既存の建物、例えば府内の場合は大友殿ドン・フランシスコの以前の屋敷の建物をもらったものだし、有馬はもともと仏教の
だが、ここ臼杵では全く新しく新築するのに日本式建築で、実はこれはヴァリニャーノ師の指示によるものだということだった。これまでゴアでもマカオでも、教会関係の建物はすべてローマやリスボンにあるのと同じ建築様式で、だからこそ遠いゴアやマカオにいてもリスボンと同じような建物で暮らしていたので違和感はなかった。
だがここでヴァリニャーノ師がそのような指示を出したのも理解できる。徹底的に日本文化に溶け込み、適応し、それを日本での福音宣教の糧とするというのが師の考えだからだ。
そしてなんと驚いたことに、我われが臼杵の城に登城した時にドン・フランシスコから日本の
ただ、
ただ、床だけは畳敷きだった。これまでも仏教の
その頃、城の方から知らせが届き、十一月の中旬ごろにドン・フランシスコの長男が包囲していた
これで、昨年から続いていた一連の大友家への反乱分子は一掃されたことになる。臼杵も、そして府内も一応の平和を取り戻したことになるが、北からは竜造寺、南からは島津がまだまだこの大友家を狙っているので油断できないとのことであった。
ヴァリニャーノ師は我われの前に、めったに顔を出さなくなった。その部屋に時々呼ばれて行っているのが養方軒パウロなので、ある日、日本語の勉強がてらに養方軒パウロに聞いてみた。
「ああ、ヴァリニャーノ様は、とても大きな事業をしようとされております」
そう言って語ってくれたことによると、まずは「ドクトリーナ・クリスタン」と題して初心者向けの教材ともなるべく
また、我われにとっても、今後は福音宣教の過程で、日本の多くのほかの宗教の人びとと語り合う機会も必ずあるはずで、その時の指針ともなるべき書物ともいえた。今後は増えるであろう日本人の修道士が、キリストのみ言葉と教会の教義をよりよく知り、さらには新たなる信徒獲得のためよりよく教えられるようにするためのものでもあるらしい。
たしかに日本語訳聖書は早急に実現させなければならない課題ではあるが、すぐには困難な以上、初期教会の聖ペトロや聖パウロがまだ福音書が書かれていない時点でも福音宣教を成し遂げたその心意気で、あらゆる工夫を講じないといけないと私も感じていた。
さらにはヴァリニャーノ師は、我われのような在日外国人宣教師に対する福音宣教の指示、心得などの指令書も合わせて執筆しているという。さらには
ヴァリニャーノ師がこうだから我われも当然のこととしてそれを手伝ったし、また時には教会の司祭の総力を挙げて取り込んでいるというような風景さえ感じられた。
そうして
だが、朝晩を中心とした寒さには閉口した。日本の冬がこんなにも寒いとは意外だった。なにしろこれまで二、三年の間、一年中が夏しかないような国で生活してきたのだから、余計にそう感じたのかもしれない。去年はマカオで久しぶりに冬らしい冬を越したが、それでもここまでは寒くなかった。
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