第11話 秘策で大逆転!

「……よし、準備はできたな!」


「はい! 凛樹さんのおかげで、衣装も着られましたわ♡」


俺は間近でメイデンちゃんの下着姿を見ていたせいでドキドキが止まらなかった。


普通、こういうのって女性スタッフとかがやるもんだよな!


まぁ、これはこれでいい経験ができたけど♡


「じゃあ、行ってこい! 俺は客席にいるからな」


「はい、凛樹さんのために、がんばりますわ!」


そうして俺は、楽屋を後にした。





司会の挨拶とともに、ライブが始まった。


まずは、千明たちのライブだ。


「あいつら、今回はどんなステージにしてくるんだ……?」


あれだけ自信を見せていた千明のプロデューサーのことを思うと、何か秘策があるに違いない。


ライブが始まると客席の異様な雰囲気に気づいた。


「おい、もしかして……」


そう、秘策があったのは千明たちのライブそのものではない。


客の方だったのだ。


『もしかして、こいつらほぼ全員、サクラか!?』


この前のファンとは、なんだか様子が違うと思っていた。


そう、これは、勝負に勝つために、用意された客だったのだ!


「くそ、やられた!」


こんな仕組んだ勝負をしてくるなんて、やっぱりあのプロデューサーは外道だ。


俺はもはや、メイデンちゃんのプロデューサーとしてではなく、一人のアイドルオタクとして、怒りを覚えていた。


同じドルオタだからわかる。


千明たちのライブを楽しみにしているファンが、このライブを見られない悔しさーー


そして何より、ファンの前でライブをできなかった千明たちのことを思うと、はらわたが煮えくりかえった。


「お願いだ、なんとかしてくれ、メイデン……」


そう願ったが、もう、ダメかもしれないと思った。


いくらメイデンちゃんが天才アイドルだからって、客が全員敵だったら、そんなもの覆せるはずがないーー



そう、この時は思っていた。



千明たちのライブが終わると、会場は静まりかえった。


きっと、メイデンのライブ中は、音を立てないようにと言われているんだろう。


千明たちと入れ替わりに、ステージに出てくるメイデン。


「はじめまして! メイデンですわ!」


シーン


「あれ、おかしいですわね。みなさん、耳が聞こえないんですの?」


誰も反応しない。


「うーん、困りましたわね」



くそっ、こうなったら俺一人でも、メイデンを応援してやる!!!



「がんばれー! メイデンちゃん!」


俺は力の限り叫んだ。



千明、夏穂ちゃんの思いも込めてーー


音が、会場に反響する。



「まかせてください! 行きますわよ!」


音楽がスタートした。


すごいーー


「やっぱり、天才だ……」


彼女のダンスはこの前以上に磨きがかかっていた。

きっと、こっそり練習していたんだろう。


そして何より、彼女の笑顔だ。


一度見たら、もう、忘れられなくなる、あの笑顔ーー


そんなメイデンちゃんのライブを見ていて、客もだんだん興奮してきたのが伝わってきた。


「いいぞーーー! メイデンちゃん!」


ステージ上でウインクをするメイデン。


メイデンちゃんが、こっちを見て、俺のためにウインクしてくれた……!



もう死んでもいい♡



いやいや、まだだめだ。

このライブを見届けるまでは!


一曲目が終わると。メイデンちゃんの様子が変わった。


「あらあらみなさん。もしかして、わたしのライブが最高過ぎて、言葉も喋れなくなってしまいましたの?♡ 困ったブタさんたちですわ♡」


ズキューン!


俺には聞こえたーー

客のハートが、一斉に撃ち落とされる音がーー



「メ、メイデンちゃーーーん!!!」


「もっと罵ってくれーーー!!!」



俺は笑いを抑えきれなかった。


とうとう、ドSキャラメイデンちゃんの本領発揮だ!



「そんなみなさんには、お仕置きが必要ですわね♡」



「「「ウオーーー!!!」」」



湧き上がる会場。


やっぱり俺の思った通りだ!


メイデンちゃんはすごい。


ファンでない人たちも、一瞬で虜にしてしまうーー


「行けー! メイデンちゃん!」


そう俺はひとしきり大声で叫ぶと、腕を組んで、壁にもたれかかった。


もうこれ以上の後押しは、必要ないだろう。



「お前、客に何をした!」


例のプロデューサーが突っかかってきた。


「なんですか、俺はメイデンのライブが見たいんです。放っておいてください。それに、別にお客さんには何もしていません」


「じゃあどうして、あんな風になってるんだ! まさかこんなことになるなんて」


「だから言ったでしょう、そんなことをしてるから、あなたはダメなんですよ」


「お、お願いだ、何がダメだったのか、教えてくれ」


脚にすがり付いてくるプロデューサー。


「ふっ、俺はただ、メイデンちゃんの魅力を、引き出してあげただけですよ。あんたには、プロデューサーの資格はない!」


「く、クソーー!」


会場から逃げるように去っていくプロデューサー。


これでもう、あいつは金輪際、アイドルに関わることがないだろう。



『『『メイデン! メイデン!』』』


会場は、メイデンコールで溢れかえっていた。


「ありがとう、みなさん!」


勝負は、メイデンの圧勝に終わった。


フフッ、計画通りーー


だが俺には、もう一つ、このライブで企んでいることがあった。



それはーー

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

みじめなアイドルオタクだった俺だけど突然タイムスリップしてJK時代の推しに告白されたのでプロデューサーになってハーレム無双します! 折出柏三 @kamitsu_shiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ