コンブと踊るときの気持ち
向日葵椎
コンブはそこに生えている。
実はサカナだから、口をパクパクしている。
朝も昼も晩も、家でも会社でもお昼休みでも。
これでも馴染んできたほうで……。
ときどき自分がまな板の上にいるような気がする。
パクパク。
お。あれは飛行機かな。ヒレを動かしてみる。
飛び跳ねて落ちるとどうなる?
パクパク。
そんなときはコンブと踊るといい。
コンブはそこに生えているから。
ヌルヌルしてるし、転んでしまうんですが。
コンブにとってはこれがダンスだ。
これがいつものコンブのダンス。
コンブは急に叫びだす。
ビックリするからね。
でもこれはコンブの使命感。
コンブの呼吸が荒い。
緊張のせいか汗をかいている。
ヌルヌルしとるやないか!
いいんです。コンブだから。
コンブは見境ない。
でもいつも一緒に躍るのはサカナだ。
コンブは膝を擦りむいている。
絆創膏はヌルヌルだからくっつかない。
何枚もそこに落ちている。
旨味が漏れ出している。
心配している暇はない。
コンブは躍るから。
包丁に光が反射しても変わらない。
コンブは躍るから。
パクパク。
ああ、また滑った。
奈落の底に落ちていく。
どうかおいしくなれますように。
コンブが叫ぶ。涙が溢れて止まらない。
ヌルヌルしとるやないか!
いいんです。コンブだから。
滑り台みたい。加速していく。
止まるのは終わるときだろう。
底が近づく。目は閉じられない。
そこら辺のサカナさ。
パクパク。
これ以上ない勢いでぶつかる。
パクパク。
――と、奈落の底、抜ける。
ここはどこだろう。
パクパク。
お。あれは飛行機かな。ヒレを動かしてみる。
パクパク。
ダンスのリズムを口ずさむ。
コンブはどこかに走っていった。
ヌルヌルを残して。
パクパク。
踊りたければまた会える。
コンブは躍りが大好きだから。
踊らせてくれるサカナが好きだから。
コンブはそこに生えてくるから。
コンブと踊るときの気持ち 向日葵椎 @hima_see
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