第11話

「お前たち!立ち入り禁止エリアに入ってこそこそと何をしている!お前たちを退学処分にするぞ!」と全世界が震えるくらい大きな声が聞こえた。


 俺は恐る恐る首を180度程回転させる。そこには四角い黒縁メガネをした高身長イケメンがいた。そういえばこの声どこかで聞いた覚えがあるし、この顔も見たことがあるような気がする。どこで見たのだろう?上手く思い出せない。と、その時俺は無意識に頭をかいていたらしい。


「お前どうした?頭かく程考えるなんて、そんなに部活に興味をもってくれたのか!以外にツンデレなんだねお前。」と嘲笑うようにあいつがこっちを覗き込んできた。驚く俺、それを見て笑うあいつ。どうやらその姿が外から見たら仲良い男女もしくは友達以上の関係だと見えるのかもしれない。俺はすごくやなのだが。


「お前ら、いい青春してるな!だが、正直そこの男子よりは私の方がイケメンだ!」と誇るように胸に手をあてる。


 なんか色々と勘違いしているような気がするし、そもそも普通の人間ではないような気がするから仕方ないとゆうか諦めるしかないというか。

 そういえば、中学生の時の生徒会会長もこの2人みたいにズレてたな。あの人は生徒が怪我しているところを見つけたら絶対に何がなんでも保健室に連れてくし、体育サボる奴がいたら生徒指導室に呼び出す。そして、運動するのがめんどくさくてサボった奴にはどんな先生よりもあたり強い説教を、運動が上手く出来なくてみんなに嫌われるとかの理由でサボった奴には無理矢理でも最低限運動ができるように個人レッスンをしていたらしい。実際、俺はそのような事に巻き込まれなかったから分からないが。それが、会長の伊藤 綉の実態である。しかもそれだけではなく、会長はかなり重度のナルシストである。これは断言出来る。それはこの目と耳でその証拠を捉えてしまったからだ。あれは思い出したくないが、俺が中学2年生の時、全学年共有のトイレの個室でお腹の痛みと格闘していたときだった。



 誰かがトイレの扉を開ける音が響いた。俺は個室でお腹の痛みと格闘していることが恥ずかしいと思う人だったから、あたかも人がいませんよ。と思わせるために個室の鍵を閉めていなかった。だが、学校のトイレの個室の扉ってのは意外と不便利でな、勝手に開いてしまうものもある。だから俺は勝手に扉が開かないものを予め頭の中にインプットしていたし、もし俺が入っている個室を開けようとしたら誰にも披露したことがない恐怖の唸り声を渾身の殺気と共にそいつにぶつけて怖がらせる事まで考えて、かなり準備はできていた、はずだった。しかし何度も思うが、現実ってのは割と厄介である。

 今回もいつも通り最悪を想定して家で練習した音が出ない声の整えをしようとしたとき、聞いた事のある声がトイレ全体に広がった。その声が誰なのかこの中学の人なら誰でも分かる。それは今日の全校朝会でよく分からんことを散々スピーチしていた会長である。俺はなんて言っているのかすごく気になった。だってあの会長がトイレでなにか1人で喋っているんだぞ?もしかしたら、会長の弱みを掴むことが出来るかもしれない。そう思った俺はゆっくりと扉を開く。

 そこには変顔している会長が鏡に反射して見えた。何してるんだ噂の会長さんは、確かに普通じゃないことは理解しているつもりなのだが、なんて考えている矢先にこんな事を言い始めたのだ。


「あーなんて綺麗な顔なんだ、、変顔しても週刊誌のモデルなんかより10倍いや100倍イケメンじゃないか、、なんて素晴らしいことだ!私は鏡の君に恋しそうだぁ!そう!現代に生きる画家ロセッティだ!」


 そんな独り言を永遠に休み時間中、目の前の鏡に向かって言ってるんだから俺はそこから出ることも、水を流すレバーも押す事が出来なくて鼻が死んだのだ。



 あぁ本当に思い出したくない事を思い出してしまった。会長の独り言のせいで自分の鼻の機能を犠牲にしかけたんだぞ!って誰かに怒りたいのだが誰にも怒れない。

そんなことを思い出すより謝らなくてはいけないと思った俺は気分を無理やり切り替えた。


「すみません。いやー悩み相談を受けていまして、あまり人に言えないような事らしくて。本当にすみません今すぐに屋上から立ち去りますので、退学だけはなんとかやめていただけないでしょうか?」と頭を下げる俺。続くあいつ。


 どうでもいい事なのかもしれないが、あいつって言うのめんどくさいんですけど。早く名前教えて貰いたい。まぁ今後その幽霊なんちゃら部活に入る気はゼロに等しいんだけどね。


「あれは冗談だぞ?気にするな。」と笑いながら。


「やっぱしね。あんな分かりやすすぎる冗談も見抜けないなんて随分とバカだね。」


「はい?そっちも俺につられて深く頭を下げてたのによくそんな嘘つけますね?」と煽ってみた。


「はぁ?あれは足にゴミがついているような気がしたから下向いただけですけど、自意識過剰すぎなんじゃない?」ともっと煽ってきた。


 正直、無理があり過ぎるのだが、そんなに煽ってこれる勇気がどこから湧いてくるのか不思議である。


「まぁまぁ、そこまでにしとけよ。争いはいけないことだと親に習わなかったのか?ところでその悩みとやらがなんなのか少々気になるが一体それはどうゆう悩みなのかい?あーあと言い忘れていたが名前は伊藤 綉だ。まぁこれでも風紀委員会の副委員長をしている二年生だ。よろしく。」と前髪を弾きながら。


「1年生の福田優杜です。よろしくお願いします。」


「同じく1年の富田あかりです。よろしくお願いします。」


 あーやっと名前がわかった富田あかりって言うのか。へー名前は結構可愛いんだな。

てか、このイケメンは伊藤 綉って言うのか。あれ?もしかして会長じゃね?いやまだ会長じゃないかもしれない。なんせこんなに身長が高くはなかったしメガネなんてかけてなかった。やっぱしきのせいかもしれない。


「じゃあ悩みとやらを教えてもらくれるかな?」と真面目な顔でこちらを見てきた。


 全然真面目な話じゃないんですけどね。





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たまたま助けたその子は幽霊だった!?(仮) あまた らいか @amataraika

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