作品タイトルは、なんだかふわふわの少女漫画っぽいですが、その実態は地に足の着いたホラーです。主人公が民俗学の研究者なので、地方の伝承を実地研究のように紐解いていくことで、物語が進んでいきます。
なんてちょっと知的好奇心を満たすための物語かと思いがちですが、主人公の行動動機は、失踪した婚約者を探すことなので、ちょっとした緊張感も漂い続けています。
どうやら婚約者が失踪した原因には、とある地方の呪いらしきものが関与しているみたいです。なので主人公は、民俗学の研究者としての力量を活用して、少しずつ謎を解いていくことになります。
作品として優れているところですが、構成ですね。適切なタイミングで摩訶不思議な体験や、恐ろしいシーンが挟み込まれるため、まるで昔の日本で流行したホラーとミステリーの融合した映画みたいな没入感のある作品となっています。
繰り返しますが、ホラーとミステリーの融合です。つまり呪いも恐ろしいのですが、人間も恐ろしいわけですよ。しかも超人的な悪意ではなく、日常生活の延長線にある敵意です。こういう恐ろしさなら、物語の内側だけではなく、現実世界でもすぐ隣にあるだろうなと思ってしまうわけです。
私は世代的に「弟切草」や「魔女たちの眠り」などのスーパーファミコンで楽しめたサウンドノベルを連想したわけですが、もしわかる人がいたら、この物語はサウンドノベルのタイトルとして売り出されても遜色ないと思ってくれればいいです。
さて作品レビューに戻るわけですが、このレビューを打った時点だと、まだ物語は完結していません。なので主人公が最後にたどり着く結末が、純然たる不思議要素による終わりなのか、それとも科学的な理由による解明なのか、まだわかっていません。
もしかしたら両者が融合した結末の可能性もあるため、このレビューを読んでくれた人は、婚約者失踪の謎が解ける瞬間を、私と一緒に見届けませんか?