取引に乗った理由

昨日は感想に返信が出来ず、申し訳ありませんでした。


実は、昨日の夜にPCが謎の不具合を起こし、一部データが破損してしまい、状況の確認のために時間を割いておりました。


破損してしまったデータの中にはこの小説の原稿も含まれており、およそ5話程度のお話のデータが吹っ飛んでしまい、ただ今現在大絶賛凹み中でございます。


取り合えず大急ぎで書いた文を思い出しながら改めて書き直しているわけですが、PCの不調の原因がわかっていない今、近いうちに同じことが起きる可能性もあるわけで、それを踏まえて一度修理かメンテナンスに出したいと思っています。


詳しいことはまだ決まっていませんが、明日から暫く投稿が途切れてしまうかもしれません。

1年以上、多くの人に支えられながらこの小説を毎日投稿していた自分としては、こんなことでそれが途切れてしまうことが本当に悔しくて悲しくて仕方がないのですが、長く執筆を続けるために必要なことだと考え、そういった判断を下しました。


PC自体になんの問題もなければすぐに再開しますので、少々お時間を頂けたらなと思っております。

本当に申し訳ありません。急ぎ再開出来るよう全力を尽くしますので、ほんの少しだけお待ちください。


――――――――――


「ふ~ん……取り合えず、蒼くんの考えはわかったよ。でも、それにしたって甘々が過ぎるんじゃない? 武神刀を取り上げたとしても、燈くんたちの友達が逃げないとは限らないじゃん!」


「まあ、それはそうなんだけどさ……そうはならないんじゃないかっていう、確信みたいなものが半分くらいあるんだよ」


 蒼の考えを受け止めつつ、それでも脱走した生徒たちへの警戒心が足りないと彼を詰るやよい。

 そんな彼女の言葉に頬を搔いた蒼は、ぼそりと意味深な言葉を口にした。


「どういう意味だ? まだなにか、気になることがあるのか?」


「……この取引は、向こうが提案したものだ。脱走した生徒たちの武神刀と引き換えに、彼らの数日の猶予を与える。諸々の状況を考えてもこちらが飲めなくもない条件を提示してきたこともそうだけど……敢えて武神刀を差し出したっていうのが気になるところなんだ」


 そう、まだ答えが見つかっていない不審点を挙げた蒼が呟く。

 ここまでの話を聞いていた燈は、親友が何を言わんとしているのかを瞬時に理解すると共に、彼に代わってその疑問点を仲間たちへと解説していく。


「そうか。確かに牛鬼みたいな危ない妖が出没するようになったこの土地で、身を守るのに必要な武神刀を全部差し出しちまうっていうのは妙な話だな。争いは嫌いだとか言っていたが、奪うための戦いと自分の身を守る戦いとじゃあ、意味合いも全く違うだろうに……」


「この武神刀が手入れされていないことを知っていてそんな提案をしたんじゃないのか? だとしたら、私たちは一杯食わされたのかもしれんぞ」


「そうかもしれない。ただ……」


「……ただ?」


 グライドは、役に立たない武神刀を引き換えに蒼たちに不利な条件を飲ませたのではないか?

 向こうの手のひらの上で踊らされている可能性が無きにしも非ずということを認めつつ、それでも何かに引っかかったように考え込む蒼の顔をやよいが覗き込みながら言葉を引き出すようにして首を傾げる。


 そんな彼女の眼差しを受け、これは自分一人で考え込んでも仕方がないことだと考えた蒼は、小さく息を吐いた後に仲間たちへと自分が感じていた不穏な空気について語っていった。


「これはあくまで僕の想像であり、根拠なんてものは何もないってことを念頭に置いて話を聞いてほしい。僕は、この取引はなにかの前準備のようなものなんじゃないかって思っているんだ」


「前準備? なんのだよ?」


「それはわからないし、だからこそ判断しかねているんだ。あのグライド・レーンという男性は、本気で幕府の支配下から逃げ出した若者たちの身を案じ、彼らを守るためにこんな取引を持ち掛けたのか? それとも――」


「なにか目的があって、脱走者たちやこの状況を利用してそれを達成しようと企んでいる、化けの皮を被った野郎なのか? そういうことだな?」


「んん? んん~? ……ちょっと待って。それってつまり、蒼くんは……」


「ああ、彼を疑ってるよ。根拠も確証もなにもないが……グライド・レーンという男を信用してはならない、僕はそう思っている。彼は何かを企んでいる可能性が高い。だからこそ、僕はこの取引に乗ることにしたんだ」

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