第25話 変わり者の研究者
ジョナたちは村の外れにある小さな家の前に立っていた。
深夜だというのに
ヴェリエルは何かを
しばらく考え込んだ後、ジョナたちに向き直り眉尻を下げた。
「ここの
ヴェリエルは申し訳なさそうにそういうと扉を開けた。
「ビアンカ、深夜に悪いが、あんたに客人だ」
ビアンカと呼ばれた老いた女性は書き物をしている手を止め、分厚い眼鏡を外して
「珍しいね、私に客人なんて。一体何処のどいつ――」
ビアンカはそう言いかけて、ジョナたちと目が合い眉をひそめた。
「どういうことだいヴェリエル。仮装パーティーか何かで私を騙そうとしているのかい?」
ビアンカは外した眼鏡でヴェリエルを指し、機嫌が悪そうに答えた。
「いいや、真剣だ。それに本物のダイモーンだよ」
一瞬静寂に包まれたその部屋には壁一面に本棚が置かれており、棚の中には隙間なく本が並べられていた。
本棚に入りきらなかったであろう本たちは床のあちこちに散乱し、部屋の四隅に積み上げられた本の山は今にも倒れそうになっていた。
「本当に? 本当にあのダイモーンなのかい?」
ビアンカは震える声でヴェリエルに尋ねた。
「そうだ。俺も見たときは信じられなかったが、本当だ」
「何てこと……。死ぬまでに会えればいいと思っていたのに、ああ、明日この身が滅んでも後悔は無いわ」
そう言うとビアンカは両手で顔を覆いながら静かに泣き出してしまった。
この反応にはヴェリエルも驚いたようで、予想外だ、と小さく呟いた。
一方でジョナたちにとっても衝撃の出会いとなっていた。
誰も口には出さなかったが、胸中は
ビアンカと呼ばれた目の前の女性があまりにも知った顔に似ていたからだ。
ログは驚きのあまり、開けた口を閉じるのを忘れ、ルーノは眉間に皺を寄せて可能な限りの説明を頭の中で弾き出そうと必死になっていた。
――周りから変わり者だと呼ばれ、1日中何かに没頭し、研究を続けている者。3人はそんな人物をもう1人知っている。
「おい、なんでシャミスにあんなに似てるんだ?」
最初に口を開いたのはルーノだった。
「分からない。……何か関係があるのかも知れない」
(俺たちが思っているよりもずっと、ダイモーンと天使の歴史は複雑に絡み合っているのかもしれないな……)
ジョナは目の前の光景に驚きつつ、しかし冷静に分析していた。
「さて! さあ、そんなところに突っ立ってないでこっちへおいで! 聞きたい事が山ほどあるよ!」
ビアンカは小さな布で涙を拭うと、先ほどまで泣いていたとは思えない明るさで、ジョナたちを自分の居る大きな円卓に誘った。
ジョナはビアンカのその豹変ぶりを目の当たりにして、確かにこの人物も変わり者だなと心の中で苦笑した。
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