第4話 出会い

 リタは再び夢を見ていた。

 母に手を引かれ、広大な草原の中をゆっくりと二人で歩いていた。

 足元に咲く、見たことのない虹色の花々は、辺り一面を覆いつくし、どこまでもどこまでも、はるか遠くの地平線まで広がっていた。

 見渡す限りの目に映るすべての景色が、虹色に輝いていた。

 それらは穏やかな風に揺られ、リタ達の前方から後方へとゆっくり大きな波を作りながら流れて行った。


 突然激しい風にあおられてリタは咄嗟とっさに目をつむった。

 顔に強い風圧を感じながら、突風は轟音ごうおんを上げて耳元を通り過ぎてゆく。

 風が止み、しばらくたってからリタは恐る恐る目を開けた。

 いつの間にか母の手を離してしまっていたようで、リタは急に不安にられた。

(お母さん!)

「リタこっちよ」

 リタは声がする方に目をやって言葉を失った。


 そこには飛竜の鼻先を優しく撫でる母の姿があった。

 虹色に輝く美しい花々の中に、禍々まがまがしさを帯びた漆黒しっこくの飛竜がぽつりと浮かび上がっている。

 その非日常的で不自然な光景は、まるで遠くの景色を拡大して眺めているような、或いは自分だけが別の次元にいて、そこから眺めているような、そんな不思議な感覚だった。

 リタは何とも言えない恐怖を感じ、震える声で叫んだ。

「お母さん! 危ないよ!」

「リタ、どうしたの? 何を怯えているの?」

 不思議そうに振り返った母の目を見た瞬間リタは息が出来なかった。

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