第6話 超王道!異能学園バトル!
そうして、フィールドに残ったのは、次の8人だった。
桜庭春樹(さくらばはるき)。
月宮小夜(つきみやさや)。
獅子王勇雄(ししおういさお)。
紅羽赫(あかばねてらし)。
二階堂武蔵(にかいどうむさし)。
加えて、春樹が知らない3人の選手。
気の強そうな金髪碧眼の長身爆乳ロングヘアー美少女、アメリア・ハワード。
苛立たし気な表情で、背が高い細身の男子、鮫島海斗(さめじまかいと)。
帽子を目深にかぶった、子供のように小柄で無言の少女だ。
最後の少女を除き、それぞれが名乗りを上げると、八人は円陣を組むように、フィールド上に丸く広がって立つと、客席の最前列に座る記者が熱くなる。
「流石に、凄い顔ぶれだな」
「はい、今期の注目株ばかりですよ! 【次席】がいないのは残念ですが、史上最高適性値を持つ【神々の砦】、月宮小夜はもちろんのこと、黄金の美姫【グラビドンルーラー】アメリア・ハワード。ダークマター使い【深海より出でし覇者】鮫島海斗。ライオンハート【雷皇】獅子王勇雄までそろっていますからね! それに、あの防止の少女も気になります。経歴不明、無言の【ダークホース】ってところですかね。まぁ、【ナマクラ】の桜庭も、ある意味有名ですし、対比材料としては優秀ですね。くすす」
その言葉を耳で拾った春樹は、少しイラついたというか、残念な気持ちになった。
分別のない子供ならともかく、いい年をした大人が色眼鏡で見るのは、吐き気がした。思わず、文句を吐き捨てた。
「悪かったなナマクラで。俺の活躍を見て後悔するなよ」
「おれ様なんて触れられてもいないぞ! あいつらの眼は節穴だ!」
紅羽が、一人憤慨していた。
同じく触れられていない二階堂は、『別に気にしてねぇし…………』みたいな顔で黄昏れていた。
「ていうか獅子王、なんでてめぇおれ様と同じBグループだったのにマスコミから二つ名なんてつけられているんだよ!」
噛みついてくる紅羽に、獅子王は困り顔で頬をかいた。
「訓練の途中でAグループに移るか誘われたからじゃないかな? 断ったけど」
「なんで断るんだよ! 余裕のつもりか!」
「いや、Aグループの落ちこぼれになったら恥ずかしいだろ? 鶏口牛後――大きな場所で冷遇されるより小さな場所で重宝されたほういい――だよ」
「笑ってんじゃねぇよムカつくな!」
「そこ、静かにしろ」
紅羽は教頭に叱られ、渋々、口を閉ざした。
その様子に、春樹は少し呆れた。
——それにしても、こうして見ると、流石に負けん気の強そうな奴ばかりだな。
紅羽、二階堂、アメリア、鮫島の顔を順に一瞥しながら、春樹は気を引き締めた。
すると、客席からは煽るような野次が飛んでくる。
「おいおいナマクラが何でしゃばってんだよ!」
「水属性だからって水差してんじゃねぇぞ!」
「俺らはトップランカー同士の戦いが見たいんだよ!」
「さっさとリザーブズに帰れよ低能!」
「小夜に守って貰おうって魂胆か!?」
前までなら、多少は嫌な気分になる誹謗中傷も、いまの春樹にはむしろ心地よかった。
吠え面をかかせてやる。
俺を馬鹿にしたことを後悔して、恥をかかせてやる。
そんな、嗜虐的な想いを浮かべながら、春樹は天剣を構築した。
右手に意識を集中させると、手の平からグリッド線が走り、剣の輪郭を形作った。
剣はテクスチャを張るように色を得て、指に質量がかかった。
春樹の天剣は細身のロングソードで、柄も剣身も水色の、涼やかなデザインだった。
同時に、天剣から熱い力が体に流れ込む。
天剣使いは、天剣からのバックアップを受けて、身体機能を数倍以上に高めることが可能だ。
他の面々も、無言の少女を除いて、次々に天剣を構築していく。
春樹は、小夜の天剣がどんなものか見たくて、視線を巡らせる。
すると、彼女の手には、柄しか握られていなかった。
剣身はどこに?
と思った矢先、小夜の柄から、半透明の剣身が伸びた。
ガラスのように透明で繊細な剣身は美しく、まるで芸術品のようだ。
小夜の能力が関係しているのだろうと、春樹はネットで目にした彼女の能力を思い出しながら納得した。
そして、客席から教頭が声を上げた。
「レギオンとの戦闘に試合開始のゴングはない。我こそはと思うものから戦え!」
「なら、先手必勝だ」
意外にも、開戦の火ぶたを切ったのは、獅子王だった。
穏やかな笑みを浮かべたまま、紅羽に向かって剣を振るった。
獅子王の剣身が発光して、雷撃が無数に枝分かれしながら、空気中を奔った。
雷属性。それが獅子王の能力だ。
それを、紅羽はニヤリと笑いながら、能力で防いだ。
「おいおい、いきなり仲間を狙うかよ普通。まっ、お前がやらなきゃおれ様がやってたけどなぁ」
紅羽の周りには、四本の避雷針が立っていた。
彼の能力は、金属を生成し操る、金属属性だ。
獅子王との相性は、見ての通りだった。
「見たかよ、これがエース様の実力だぜ!」
「黙れよ、Bグループの自称エース」
重い声でそう言ったのは、鮫島海斗だった。
彼が天剣を人工芝に突き刺すと、黒い影が伸びてきて、影から黒い刃が飛び出し、避雷針をすり抜けた。一秒遅れて、避雷針が輪切りになる。
分子結合のクーロン力と光を消滅させる暗黒物質、ダークマターを生成操る能力、闇属性。それが鮫島の能力だ。
ダークマターの前では、ただの鉄など紙切れに等しい。
紅羽赫は表情を引きつらせ、二歩下がった。
「ま、マジかよ……」
「てらしぃー、海斗はボクと同じAグループだよぉ」
「マジかよぉ!」
「邪魔だ」
言って、鮫島が自分の周囲に黒い影を立ち昇らせた直後、影たちは突然、縦に潰れた。
鮫島が視線を細めると、新たなチャレンジャーが高笑った。
「ハハ、自慢のダークマターも、重力には逆らえないでしょう!」
欧米美女のアメリア・ハワードが、長い金髪と爆乳を揺らしながら挑発する。
鮫島とアメリアの敵意に満ちた視線が交錯した。
「あ、アメリアもボクと同じAグループだよ」
「ですよねぇ!」
小夜の言葉に、紅羽は悲鳴を上げた。
というか、Bグループの紅羽が見たことがない生徒は、必然的にAグループに決まっている。
「さぁ来なさいよ自称最強。アタシが相手になってあげるわよ」
「ッッ、潰すぞ」
鮫島とアメリアの間に流れる一触即発の空気は最高潮に高まり、割り込む余地が無かった。
だからこそ、春樹は動いた。
「よっと」
春樹が天剣を一振りすると、みんなの頭上から雨が降り注いだ。
雨が降ったのはほんの数秒。
みんなの髪と制服を、わずかに湿らせる程度だ。
それでも、七人の注意を引くのには十分だった。
「おい、俺を忘れるなよ。訓練中はCグループでも、今はこうしてここにいるんだからな」
わざと強めの語調を作って、言ってやった。
ここは、自分の強さを見せつけ、ナマクラの汚名を払拭する最大のチャンスだ。
春樹としては、効果を最大にしたい。
みんなが散々戦い消耗してから勝っても、漁夫の利だと馬鹿にされるだけだろう。
そんな思いを汲み取ってくれたのだろう。
獅子王はほがらかに笑った。
「はは、そうだな。悪かったよ桜庭。じゃあ、行くぜ!」
―———―———―———―———―———―———―———―———―———―
本日、2020年5月31日に【失恋したハロウィンに鬼娘拾ったらキスされた】を新しく投稿しました。
もしも気が向いたらこちらの作品もよろしくお願いいたします。
また、本作【これはナマクラ天剣使いの俺が世界最強の彼女を救う話】は、登場人物が多めになっているので、もしもキャラが多すぎて覚えきれない、誰が誰だかわからない、読みにくい、という場合は、どうぞ指摘してください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます