第3話 ようやくスタートラインに立ちます

久しぶりに町へと繰り出したユキムラ。

 早速、もう1度自分を鍛え直す為メロと特訓をする。

 まずは、Gランクの魔物討伐から始めようとしたが、その有様は酷いものだった。




 「うぐっ!ちょっと、やば、あぶねっ!」



 「ユキムラさん、最低ランクの魔物ですよ。何しているんですか」


 そう、僕は今最低ランクの魔物と壮絶な戦いをしている。

 勿論、傍から見ればただのお遊びにしか見えないかもしれない。

 無論、僕は真剣だ。

 それ程までに、僕の能力は低下していたのだ。


 「もう、分かりました。じゃあ、魔物は諦めて私についてきてください」


 見かねたメロはGランクの魔物を一撃で倒して僕を連れて森の奥にある家へと入った。


 「今日からユキムラさんはここで修行してください」


 「えっ!ここでやるのか。メロが修行をつけてくれるのか?」


 「いえ、もう1人呼んでいるので少し待ってください」


 この森は空気がとても新鮮で美味しい所だ。

 連れてこられた家はロッジで周りには森以外何もない。

 とても居心地が良い場所だ。

 そんなこんなで、1時間くらい僕は自然を堪能していた。

 そして、家に戻ってゆっくりしようとした時、

 こちらに近づいてくる足音が聞こえた。

 そして、ドアを叩く音がした。


 「トントントン」


 「入るぞ」


 僕はその声に聞き覚えがあった。

 何処かで会ったような気がした。

 メロが家にきた客人を出迎える。

 そして、客人が入ってきて僕と目があった時、少し苦笑して身体を僕の方に向けてきた。


 「お前、何処かで会ったことあるよな。あぁ〜そう、魔物に苦戦してた調子乗ってる野郎だろ」


 酷い言い方だ。

 まぁ、その時は確かに調子に乗っていたし仕方がないか。


 「そんな言い方はやめてくれよ。確か、名前は、レイだったか?」


 「あぁ、そうだ。そういえばお前の名前を聞いていなかったな。名前はなんて言うんだ?」


 「俺はユキムラ=アカイシだ。ユキムラと呼んでくれ、よろしく」


 挨拶を終えたところで、メロが僕とレイをリビング呼んで紅茶を出してくれた。

 僕は、どうしてレイがここに来たのか?

 メロとルイはどういう関係なのかが気になった。


 「2人はどういう関係なんだ?後、レイを呼んだ理由はどうしてだ?」


 僕の疑問に対してメロがにこやかな表情で答えてくれた。


 「私とレイはね、幼馴染みなんだ。それでね、ユキムラに修行つけるなら能力の使い方に長けているレイしかいないと思って呼んだの」


 その話を聞いてレイは少し渋い顔をした。


 「おい、俺はユキムラに修行をつけるために呼ばれたのか?そんなのやらないぞ」


 レイは呼ばれた理由を今初めて知ったようだ。

 メロはそんなレイを見てもう1度説得を試みることにした。

 レイ以上の適任者は居ないと思っているのだろう。

 メロは必死に真剣な表情でレイにお願いをした。


 「レイ、あなたしかいないの。お願い、手伝って」


 レイはメロの真剣な表情を見て少し心が揺らぐが承諾する気はなさそうだ。

 そんなレイを見てメロは何か思いついたのか、悪態をつくような表情であることを提案する。


 「分かった、修行つけてくれたらレイの好きな武器をプレゼントしてあげるよ」


 「やります」


 (はやっ…)


 僕は心の中で大笑いした。

 レイは案外ちょろい奴なのかもしれない。

 あんなに修行つけることを渋っていたのに武器を新調を対価にしたらあっさり承諾したからな。

 ということで、僕とレイの修行が決まった。


 「早速やろう…と言いたいところだけど今日はやめて明日からにしましょうか。今、ご飯を用意するから待っててね」


 そんなことを言ってメロはキッチンの方へと向かった。

 リビングでは僕とレイの2人きりとなった。

 しばらく無言が続いたのち、レイが僕に対して話しかけてきた。


 「お前ってさ、何者なんだ?」


 唐突な質問に僕は少し驚いた。

 レイに対して僕の事情を話しても大丈夫なのか、と思ったが修行をつけてくれる『師匠』へのお返しとして明かすことにした。

 メロにも聞いて欲しかったため、リビングに呼び戻した。

 お茶を入れて戻ってきたメロは僕たちの前に置き、3人で机を取り囲むように座った。


 「実は、僕、別の世界から来たんだ」


 レイとメロは目を丸くして驚いた。

 深呼吸をして先に落ち着いたメロは背筋を整えてから僕の方に向き直った。

 レイはなぜか目をキラキラさせていた。

 僕はとりあえず、話を続けることにした。

 僕の世界では普通の高校生として暮らしていたこと。

 その世界での暮らしや友達についても少し話した。

 こっちの世界に飛ばされてから魔物に襲われたこと。

 爺さんに助けてもらったこと。

 爺さんに恩を返すため、魔物討伐に行きお金を稼ごうとしたこと。

 最強となって調子に乗った僕の末路と今に至るまでの事情まで細かく隠さずに話をした。


 「お前の事情はだいたい分かった。じゃあお前が今から修行をする理由はなんだ?」


 レイが僕の核心を突いてきた。

 たしかに、メロにもう1度励まされて戦うことを決心したが、しっかりした目的は僕にはなかった。


 「えっと……うん」


 上手く答えることが出来なかった。


 「お前は何のためにこれから戦うんだ?無いなら修行なんてやるつもりないからな」


 その刹那、さまざまなことが脳裏に浮かんだ。

 爺さんのためにというのは勿論だ。

 しかし、僕はその瞬間もう1つ達成したいことがあった。

 この世界には問題が山積みだ。

 この世界を救ってみたいと思うようになった。

 しかし、以前僕は調子に乗って世界を救うことが出来なかった。

 でも、かつては1人だった僕には今は仲間がいる。

 メロもいるし、レイが協力してくれるから今の僕は自信を持って言うことができた。


 「僕は…みんなで世界を救えるようになりたい」


 そうして、僕の2度目の世界最強への道が

 真の『英雄』への道が始まった。

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1人では最強を誇っていた僕が協力を覚えたら能力が壊れました 玖万里空 @Lucina

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