第10話 それから
わたしは応用サイエンス部の部室でくたばっている。そう、今日は体育の授業があったのだ。
片道一時間のグラウンドである。皆、疲れきっているので出席を取るだけであった。
ホントこの学校は……。
政府要人の車の前で自決事件が終わり。橋場の姿はなくなっていた。
「ハロー、クマたん」
橋場がフレンドリーな態度で入ってくる。訂正、三日ほど有給を取り、応用サイエンス部に入り浸っている。
「皆さん、冷たい飲み物が入りましたよ」
かぐらはメイドの仕事が気に入っているらしい。
「クマたん、久しぶりに釣りに行こう」
朝霧が詰め寄ってくる。小学生の頃はよく二人で釣りに行ったものだ。親が転勤族になり一時期は離ればなれなったが、わたしが高校進学で家のあるこの地で一人暮らしであった。かぐらのおかげで生活に余裕が出て釣りにでも一緒に行けるのである。
「クロダイでも釣りに行くか!」
「クマたん、クロダイは難易度高すぎ」
仕方なく、海岸線で小魚を狙う事になった。
おや、香港で反政府デモに混じって謎の寄付金団体があるぞ。アンダーグラウンドの掲示板で話題になっている。
早速、ハッキングだ。
「かぐら、バックアップを頼む」
「はい、クマたん」
かぐらがハッキング技術を覚えて大きな戦力になっていた。この団体は反政府をうたいながら政府系の資金になっている。ま、外国の事だし見るだけのポリシーは変えなくないのである。わたしはノートパソコンを閉じて明日の釣りの準備をする。
「かぐらも付いて来るか?」
「はい、せっかくですので、橋場さんも行きましょう」
「今日の体育の疲れでは無理」
「見ているだけでも楽しいぞ」
わたしの誘いに結局、四人で行くことになった。
そう、応用サイエンス部は今日も平和であった。
『熊之豪はじめ』は何処まで私情なの? 霜花 桔梗 @myosotis2
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