罰ゲーム
おかえりなさい
本日の課題への取り組みお疲れ様でした。
ここからは文章での説明では時間がかかるため、会話で進めさせていただきます。
そんな簡潔な文章が画面に映し出されると、画面の端から、小人くらいの大きさの人が現れた。
「初めまして。私はこのゲームで運営をしているロビだよ」
それ虫のような羽が生え、鋭い耳が付いている。人というよりは、妖精に近いような姿をしたキャラクターだった。
「よく出来たキャラクターだな」
「キャラクターじゃないよ。私は自立型のAI!そうだね・・・半分人間半分機械みたいなところ」
よく分からないが、こちらの言ったことに反応して、すぐに返答をする。AIなのは間違いないようだ。
「だったらこのアプリ消してもいいかな?俺あんまりゲームやらないんだけど」
「いいの?そんなことしたら名実ともに人生終わっちゃうよ?」
「ゲームオーバー的な意味か?だったらいいよ。俺の負けでいいから」
「分かってないなぁ」みたいにロビは首を振ると、画面の外から何かを中央に持ってきた。
「これ見ても同じこと言える?」
そこには、俺の顔写真、年齢、高校名、さらには今日のお昼に食べたお弁当の中身までが詳細に記されている。
「なんだこれ・・・?」
「見ての通り、私はこれだけの情報と調査能力を持っているの。ちなみにお弁当が分かったのは他の人のスマホのカメラで見たから。起動してなかろうが関係ないよ」
こいつの言っていることに間違いは一切ないのだろう。まとめられた俺の情報を見れば見るほど、俺しか知らないはずの情報が大量に出てくる。
「それで話進めてもいい?今日のお題は前木 楓の好きなところを3つ言う、だったね」
「あぁ、ちゃんとやったぞ」
全く信じず、冗談でやったことだったが、今になってあの恥ずかしい思いに無駄はなかったと安心出来た。
「確かに成功してるね。でも本人に好きなところじゃなくて褒めろていうお題に偽装した辺りはヘタレだねー」
「余計なお世話だ」
すると今度は、ロビが難しそうな顔をする。
「それがそうでもないんだよねー。このゲームの利用規約ちゃんと見た?」
「いや、見てないけど」
「だよねー・・・ここ声に出して読んでみて」
「・・・他者にこのゲームの存在を教えてはならない。教えた場合、その日のお題の合否に関わらず罰ゲーム1回追加・・・え?」
「え?じゃないよーせっかくクリアしたのに勿体ないよー」
説明書なんかをほとんど読まない現代人の悪い癖がここで来た。
これを運営側が悪いと言うことは出来るわけもなく、俺は黙ってしまう。
「初犯だし、軽い罰ゲームにしといてあげるよー」
「待って、罰ゲームって具体的に何?」
「そうだよね。分からないってのも怖いよね。せっかくだし、今回は特別にURLをプレゼント!」
ロビの言っていることが全く分からず、言われるがままにURLwタップすると、1つの記事に飛んだ。
高校時代の思い出、そう題名に記された記事は、何人かの高校の時の思い出や振り返りを書いてあるだけのもので、本当にしょうもないものから、感動する内容まで多種多様に書かれている。
しかしその中で、1つの文章に目が止まる。
高校1年の時の話
これは高校1年の文化祭の話です。
僕は、とても人に頼まれごとをされやすい性格です。
そのせいで文化祭当日も、3時間だけだったはずの店番をあれよあれよと丸1日やらされました。それだけだったらまだしも、俺はついでとばかりに売り上げなどを記した資料を提出に行かされました。
教室で軽い打ち上げをすることを知っていた俺は、さっさと提出して教室に戻りました。
しかしお菓子やジュースはほとんど飲まれ、俺は麦茶だけひたすら啜らされました。
一緒に回る予定だった幼なじみにはフルボッコにされ、どこかで財布も落としました。
・・・文化祭なんて二度と来るな
投稿者 Y.Y
「これ去年の俺じゃねぇか!」
俺は文章を見て、トラウマが蘇り、血涙を流しながらキレる。
その記事のコメント欄も、俺の内容がよく触れられていて、「不憫すぎて草」「麦茶www」と似たようなコメントばかりだった。
「理解出来た?これが罰ゲームの一例だよ」
置かれている状況への理解不足と、その反面で起こったこのありえない現象に、俺は唖然とするしかなかった。
「これからも定期的にお題出しに来るから!それじゃ!」
ロビは画面からフェードアウトし、恋愛GOも勝手に閉じてしまった。
これが、俺の人生を大きく変える高校生活の始まりだった。
あれから今日の「白石 幸と一線を超える」で2週間になる。
最初の1週間は、羞恥心やラインを超えていそうなものに対して最初から諦めていたが、本格的に個人情報が利用されていることに対して、身の危険が日に日に目に見えてきたのだ。
その結果が今日の裏事情だが、当然それを2人には言えない。
すると基本的に朝一に送られてくはずのお題が、何故か今送られてきた。
前にもこういうことが一度だけあり、その時のお題は「宮守 涼香を抱きしめる」という死or死だった。
この理屈で行くと・・・そう思いながら、お題を確認すると、案の定だった。
「宮守 涼香をで週末デートに誘う」
出来ることならスマホかお前どっちか割りたい 本伝 ミナト @maybewomen
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