復讐
趣味太郎
第1話
『今日の国会で、ハイパーシティ法案が可決されました。今後、この法案に基づいて様々なことが変わっていくようになりますね。』
「ハイパーシティ法案?なにそれ?」
「あぁ、、なんかこの前一時期SNSで話題になってたやつ?なんかこの法案によるとこれから国民は監視されるようになるらしい」
「へぇ、しらなかった。」
「結局あの法案って何だったんだろうな」
「なー」
高校3年生の春、ふと思い出したのは二年前の高校1年の時に交わしたそんな会話だった。
法案が可決するころにはSNSでの熱も冷め、もはや反対運動をしている人はほとんどいない状況だったと思う。流行が去ったということだ。
「なんかその結果何が起こっているのか、ってあんま知らないよな俺たち」
「そうやなぁ」
「もしかしたらデモしてた人たちが片っ端から逮捕されてるかもしれないぜ?」
「それはないだろ、言論の自由ってものがあるし」
冗談交じりにそんな会話をしていた。このときは気づいていなかった。
「もう受験だな」
「そうやなぁ」
「ずばり、自信のほどは?」
「まぁ学力的には申し分ないでしょうな。だてにこの一年懸けてない。」
「すごいねぇ」
受験へのプレッシャーを気にしないように、そんな会話をしていた。このころもまだ気づいていなかった。
「じゃあ次に会うのは受験が終わり切った後だな」
「おうよ、互いにベストを尽くそうぞ」
『昨日未明、都内のビルから高校生が投身自殺をした件について、、、』
「あら、また自殺?最近増えてる気がするわねぇ」
このころもまだ気づいてはいなかったのだ。のどに引っかかった小骨のような違和感を覚えながらも、明確には。
自分の受験が終わり、親友に連絡をするも一向に既読がつかない。
『最近、友人との連絡が通じない。まさか後期まで受験延長か?www』
そうSNSに投降した次の日だった。母に神妙な面持ちで呼び出された俺は、出どころのよくわからない漠然とした不安を抱えながら、正面に座って話を聞いた。
「幸喜、落ち着いて聞いてね、ずっと仲良くしてた○○君なんだけど、一週間前に自殺してたんだって。」
それ以降のことはよく覚えていない。母を問い詰めた気もするし、茫然としていた気もするし、大泣きしていた気もする。
ただ、その日以降自分の中で確実に出来上がった感覚がある。
『この国は、何かがおかしい』
復讐 趣味太郎 @syumitaroooo
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