氷室 瑠璃瑠璃の人格

身長172cm、体重121kg(装備込み)

深淵の怪物を喰らった魔法使い。ドS。朝焼けのような青い髪と青い目をしている。死に瀕すると金色になる。物事の距離を長くする能力を持っている。その効果範囲は多岐に渡り、「次の一秒が来るまでの距離」を開いて時間を止めたり、「攻撃と自分までの距離」を伸ばして攻撃を止めたりも出来る。「ドアまでの距離」を伸ばせば逃走も出来なくなる。縮めることはできない。

島の諜報や暗殺、警察組織などを統括してる。


瑠璃瑠璃はもう当時の事をよく覚えていないが、奴隷として生きていた時代があった。商家の雑用として使われ、また同じ奴隷からいじめを受けていた。綺麗な金髪をしているのが理由で、不思議なことにいくら汚しても雑に扱っても翌朝には金糸のように輝いた。それはつまり証拠が消えるということに他ならないし、他の奴隷たちもそう考えていた。千切ったりむしったりしようとすれば腕の方が傷ついた。要らないものを結んでおけばそれも消滅させるので、瑠璃瑠璃は便利に使われていた。辛かったけど、商家の蔵書を見れる仕事をしていたから、本を読んで耐えていた。

ある日、街を海賊が襲った。丁度正午すぎの出来事だった。現れたのは大きい船が1隻だけだったが、街が壊滅するくらい殺戮を行えるだけの戦力を載せていた。

瑠璃瑠璃を所持している商家にナイフを使う男が押し入った。男は先に「逆らうな、騒ぐな、大人しくしろ」と警告した。護衛も荷卸もまるで敵わないで死んだ。叫んで護衛を呼んだので主人も死んだ。逃げ出したので、瑠璃瑠璃以外はみんな死んだ。男は瑠璃瑠璃の髪も価値のあるものとして盗むことにして、連れ出した。

その三日後、船は街を離れた。産まれて初めて海に出たが、それほど綺麗だとは思わなかった。旅路を記した本を読むのは好きだったからとても期待していたけれど、空の方がよっぽど綺麗な青をしている。

瑠璃瑠璃の髪がまるで切れないことを知った海賊たちは、瑠璃瑠璃を連れ去った男を除いて落胆した。はじめて髪のお陰で嬉しいことが起こったので、お返しとして差し出そうと考えていた瑠璃瑠璃もがっかりした。だが男は、「美しい髪の毛は美しい女性にこそ似合う」と言って瑠璃瑠璃の髪を掻いた。瑠璃瑠璃は彼のことが好きになった。

だが、瑠璃瑠璃は置き去られた。理由は単純で、弱いからだ。海賊は一隻しか船を持っておらず、包囲を受けたり突貫をかけたりは日常茶飯事だったので、守りきれないと判断してのことだった。盗んだアーティファクトの「必ず刺さるナイフ」を餞別に貰い、陸に降りた。

瑠璃瑠璃は力を求めて、世界中の本を読んで歩いた。数年歩いて、時空を超越した魔術師の研究室にたどり着いた。そこは遺棄されており、何もかも一切合切が奪われていたが、持っていたアーティファクトの力で石畳の隙間に隠された異空間に気がつき、そこで時空の向こう、深淵について知った。

数日後、異空間の壁が割れて、異形の化け物が侵入してきた。銀の時計のようなものを核に、蠢くなにかが多重に重なっていた。銀の時計には写真が貼られていた。それはどうやら死にかけているみたいで、体の裏側はすべて切断面になっていた。裏側、というよりある一次元の方が正しいかも知れない。

ある推測が浮かんできた。これは元々ここを作った生き物で、四次元かそれ以上の世界に足を踏み入れたんだろう。しかしその世界で致命傷を負って、逃げるために三次元的な部分以外を切り捨てたのでは?

瑠璃瑠璃はそれを食った。余すところなく取り入れた。そしてなにかが変わった。

まず髪がすべて抜け落ちた。そしたら壁の穴から6次元宇宙を漂うガスの虫が這い出してきて、慈しむようにそれを舐めた。たちまちに髪は輝いた。瑠璃瑠璃はそれを踏み潰して食べた。爪と歯と下顎と両目がこぼれ落ちた。怪物が愛しそうに寄り添ってきたので、殺して食べた。瑠璃瑠璃だったものはとても怪物に愛されていた。脳みその一部を吐き出した時には甘いロープの雷が舐めに来たりした。

瑠璃瑠璃は、自我だけはなくさなかった。

体の回りで起きた出来事はなんとなく感じていた。呆れ返るほどの時間が流れて、三次元宇宙が一度閉じようとしていた。高位の存在になりかけている瑠璃瑠璃は、何もかもが燃え尽きる未来を見ていた。絶望した。こんなはずではなかったのに、と。しかしその未来は来なかった。宇宙はなぜか再臨し、瑠璃瑠璃は瑠璃瑠璃が産まれる運命に引き抜かれて三次元の世界に戻ってきた。髪の毛が宇宙と空気の境目のような美しい青色に変わっていた。

瑠璃瑠璃は恋のことを思い出した。海賊たちのアジトに向かうと、仲間割れの真っ只中だった。ナイフ使いの男はあのあと船長になり、人間を超越し、宇宙の再臨を引き起こして2巡目を作り出し、そして今すべてを奪われて裏切られた。と語った。訳がわからなかったが、彼をそっと抱き締めて、彼の第一の部下になった。

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