銀兎の人格
銀兎の人格
800歳前後の悪魔。身長145前後、体重80前後(羽が重いため)。階級は小悪魔。人懐っこい性格で、一度気に入るとべったり寄ってくる。日がな1日見つめてきたり、やたら引っ付いてみたりと独特ながらかわいらしい方法で自分の愛を表現する。
暗めのオレンジ色の髪をしていて、紅い水晶のような目を持っている。
銀兎は魔界で目が覚めるより前の記憶を持っていない。それ自体は不思議なことではないのだが、銀兎の主も銀兎を産み出した覚えがなく、地上にも天界にも銀兎のもとになった存在の情報がない。それに加えて、銀兎の能力は特異なものだった。
銀兎は、見たものなんにでもなれる能力を持っていた。相手の能力をコピーし、記憶を盗み見て、姿さえも同一になれる能力だった。悪魔の世界は弱肉強食は当然で、力があればあるほど正しいとされている社会だった。支配力で他者に文句を言わせないようにしたり、単純な力だけで自分の考えを押し付けたりすることが出来る世界だった。だから、銀兎の能力は疎まれた。仲良くしたいだけなのに、銀兎は排された。恐れられ、銀兎の視界に入る事すら避けられた。それでも銀兎はへこたれなかった。魔界の草花に変身して他の悪魔を眺めていたり、コートやブローチになってついて回ったりしていた。その日々は楽しかったけど、孤独感はどんどん成長していた。
ある日、同じ悩みに囚われている小悪魔を見つけた。銀兎はその小悪魔とたちまち仲良くなった。彼女は実祈といい、相手を完璧にサポートする能力を持っていた。サポートの手段のために、相手の能力や感情、戦法、作戦などを瞬時に網羅できた。それゆえ迫害されていたのだ。
同じ痛みを共有する仲間が出来て、銀兎は嬉しかった。彼女と一緒なら、1万年生きるのも怖くなかった。銀兎はめちゃめちゃに甘えたかったので、年上にも関わらず、彼女の妹になった。
しかし、その幸せは簡単に引き裂かれた。人間界の一つが、正確にはその中の一つの国が、世界を巻き込む戦争に悪魔を参戦させようとしていたのだ。大きな力を持った悪魔は考えた。この戦争を長引かせれば、沢山の魂が楽に確保できると。そういう理由で、力の弱い小悪魔を大量に人間界へ送り込んだ。そのうちの一人に、彼女が含まれていたのだ。
銀兎は暗闇に落ちた感覚だった。地獄のような戦地に旅立った彼女のように、銀兎は孤独という地獄に堕ちた。前の日々に戻っただけだったのだが、幸せとの差が激しすぎて、強靭な銀兎の心でも耐えられなかった。発狂し、我を忘れた銀兎は、魔界の奥底に閉じ込められた。
無でできた監獄に、400年間閉じ込められた。閉じ込められるより前の銀兎からすれば、人生の倍以上の期間。銀兎は肉体を分裂させて、おままごとをして過ごした。一部を見聞きした事のある他人にして、一部を実祈に変質させ、会話をして楽しんだ。いや、楽しくはなかった。
400年経ち、自我がぼやけてきた頃合いに、なんだかやたらに明るい感触があった。それは解放であり、本物の彼女だった。
地上で強大な力と死に別れた兄妹を手にいれて戻ってきた彼女は、地獄から銀兎を解き放ち、彼女の家に招いた。
銀兎は、肉体の一部に嫌な記憶をすべて押し付けて、代わりに無の世界に置き去って、幸せを手にいれた。
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