久弓 真の人格
久弓 実祈の兄。重度のヘビースモーカー。日に10から20箱程度飲む。完全に真っ白い髪の毛と、血の色をよく映した瞳を持っている。人間で、妹に会うために不老をその身に受けている。喪われていく生命力を他者から貰うことで補い、肉体が限界を迎えないようにしている。そのせいで、1300年ほど生きている。能力は煙を操る能力。土煙も粉塵もいけるので、目に見える気体のほうが適切かもしれない。
永く生きたからか生来の気質なのか、物事に対しズボラで生活能力がまるでない極度のめんどくさがりである。めんどくさければ一週間ぐらい何も食べずに寝ているし、日課以外座りっぱなしだったりはざらにある。世捨て人のような生活を送っている。髪の毛も伸び放題にしており、なかなか顔が見れないので一部では素顔について好き放題言われている。戦闘で失う以外でここ最近切ってない。賭けの対象にもなっており、実祈の兄なので途轍もないほどのイケメンだというのが主流らしい。実態はとてもやる気のない顔であることを覗けば整った顔立ちである。とても身長が高いので、髪の毛縛るだけでもそこそこイケメンになるだろう。
真は1300年前、血の繋がった妹がいた。名前を実祈といい、用事で留守にしがちな両親に代わってめんどうを見るように言われていた。ある日、家に両親の遺体が届けられた。届けてくれたのは父親の部下で、曰く「お前のような気色悪い化け物が生まれたから彼らは死んだのだ」そうだ。心神喪失気味に両親に寄り添いながら、よく考えてみた。家の外には、妹や親のように髪が黒く目も黒い人たちがいた。自分のような見た目の人間はいなかった。この黒が人間の証なら、自分はそうではないのだと思った。しかも、犬や猫のようにかけ離れた姿をしているわけではない。これが父親の部下の言った気色悪いという言葉に当たるのだろうと結論がついた。化け物とはこの能力のことなのだろうか。自分には産まれたときから動かせる腕が3つあった。両の腕と、もうひとつ。釜戸の燃えカスと呼ばれるものだった。粉塵状に舞い散るものに神経を通し動かすことができた。自分の指よりも器用に動かせた。そこにあることを感じることもできた。両親には出来ないことらしかった。色が違うだけで気色悪いと呼ぶ性格らしいので、きっと出きることが違うのは化け物なのだろうと推測した。これがもし、親以外の全員がそう思っているのだとしたら?
妹はうまくしゃべれないが両親は言葉を教えられるように、父親と母親で好きな食べ物が違うように、両親以外は自分を愛していないのでは?嫌いなのでは?
そしてふと、怖くなった。自分は虫が嫌いで、見つけ次第粉々にする。両親も、別にとがめたりしない。それと同じように、嫌いな自分を踏み潰して破壊しても、誰も怒ったりしないのでは?両親を除いて。
気がついたら、夜が深くなっていた。体は憔悴しきっており、とても空腹だった。何日間かそのまま置いておかれていたみたいだった。両親に止まったハエを、釜戸の灰で絞め殺した。
しばらくして、家の回りにたくさんの小さな土煙を感じた。これは人が歩くときに立つ規模のものだったが、こんなにたくさんなのははじめてだった。家は村外れにあり、小さかったので、人通りはほとんどなかったから。
窓から外を覗いてみた。たくさんの大人が、たっていた。さっきのハエのことを思い出した。昔、犬が怖かったから遠くから口をふさいで殺そうとしたときのことを思い出した。
身体中が、恐怖で震えた。それと同時に、裏手のドアが開く音が聞こえた。逃げ出した。
煙を操る力を使って、空を舞った。力一杯押し上げたら、体は簡単に持ちあがった。でも、逃げ先なんてなかった。見下ろした家々はちっぽけで、空は宇宙の色をそのまま映していた。あとは、延々と緑が広がっていた。疲れきるまで空にいて、へとへとになり凍えながら自宅に着地した。
後悔した。なんで、とあの時、が頭を埋め尽くした。妹が、粉々のぐちゃぐちゃになっていた。そこからしばらくは記憶が抜け落ちていた。後で調べてみても、脳のどこにも記憶が存在していなかった。気がついたらまた空にいた。頭の上では朝日が宇宙をかきけしていた。眼下にあるのは、ちっぽけな建物と、ちっぽけな残骸だった。内蔵をばらまいているのも居た。多分自分が皆殺しにしたんだろうと思った。さらに悲しくなった。こんなに強いなら、妹を守れたのに。って思って、泣いた。
それからは家で生活をした。両親の遺体からはほんのすこし魂のようなものを感じられたので、見晴らしのいいところに埋めてあげた。後で知ったが、そこは本来の両親の家の庭だったらしい。
でも、妹の体はどうすればいいのかわからなかった。寄り付く虫は全部殺したけど、傷んで朽ちていくのを見守るしかなかった。空っぽで、普段食べる肉みたいに思えた。もっと早く思い至っていれば、食べていたかもしれない。産まれて7年、ずっと部屋から外を眺めるだけだったから。
保存も調理も出来ない生活を送っていたら、ある日体が動かなくなった。死ぬのだろうか。嫌だったけど、何も出来なかった。最後の力を振り絞って、妹の遺体によりすがった。同じところに行ける気がした。
そこで、ある人に救われた。目が覚めたら屋敷にいた。豪勢で、そして食べ物があった。食べようと思ったら腕に管が繋がっていたので、引き抜いて食べた。気を失っていた間、近くを這いずっていたものを食べていたらしい。結局は食ったのだ。そのお陰で、生きていられた。当時は、安堵と歓喜でいっぱいだった。
命の恩人は、自分に輪廻転生の話をした。厳密には違うが、現代に一般的に知られているものと同じことだった。妹のそれを待って、もう一度会いたくないか、と訪ねられた。会いたかったからそう答えたら、二本の刀をもらった。それと、心臓近くに手術を受けた。これにより生き永らえていられるようになる、と他人の命を集める核を埋め込まれた。刀はその技術のもととなる遺物らしく、切り殺した相手を封じ込めておいて刃こぼれや折れたとき等に使うという代物だった。持ち主の怪我を癒すこともできた。恩人は、戦士がほしかったらしい。だから戦うことにして、技を磨いた。たとえ何があっても。力になれるように。そうでもしないとおかしくなりそうだった。待ち続けるなんて。
そうして、数えるのも億劫になるぐらい鍛えて、切り殺していたら、本当に再開することができた。もう一度抱き合うことができた。身長が伸びるのは止まらなかったので肉体の大きさはとても差が出てしまったが、そんなものは関係なかった。何もかも一切合切がどろどろに溶ける感覚があった。背負っていたものが祝福されて天に返された。今度こそは守ることが出来る。永劫のようなこの間のような昔の約束を守れる。その心地よさに、また泣いた。
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