第3幕「勝手知ったる己が道」
さて、斬ったリザードマン達の埋葬を終えた奏太朗と重兵衛は墓地で深く手を合わせておりました。簡易な墓標と簡易な線香をあげて、奏太朗が短く経を読んでおります。
その墓地の周辺は、先程の晴天とは打って変わって小雨が降ってきているというのに異様な客人の来訪やリザードマンとの立ち合いを見ていた野次馬が集まっておりました。
斬られた悪党を丁重に埋葬するその風情に野次馬も見惚れていたのでございます。
ーーこの街を悪の手から助けていただけないでしょうかーー
二人の頭の中にはこの言葉が木霊しておりました。読経が終わり、二人が立ち上がるとカナデが待っておりました。奏太朗達はまずは貸し部屋へと戻り、暖を取ったのでございます。
「して、先ほどの意味は?」
カナデが作った野菜と思われる具材が入った汁を飲みつつ二人は真意を確かめた。
「この街には、いえ、正確にいえばこの世界には今危機が迫っているのです。」
「「危機?」」
「シラヌイと呼ばれる魔王の部下達が残虐非道な行いをしているのです。」
その言葉を聞いた途端、奏太朗も重兵衛も背筋が凍ったのでございました。
「しら…ぬいだと?」
「カナデ殿、その者達の
「は、はい。姿は黒い服装が多く、見たこともない動物の仮面をつけているので素顔はわかりません。3年前に突如として復活した魔王の軍に所属した彼らは国々だけでなく様々な街を襲っているのです。物資を魔王へ届けるために。」
「魔王…。しかしやはり、不知火め生きておったか…」
「しかし3年とは…俺らがここに来てまだ数週だぞ。差がありすぎる。」
「もしかしたら、あなた達が来る時に何か影響があったのかもしれません。魔王の影響かも…」
「その魔王というのは何なのだ?」
「魔王ノブナガ。この世の滅亡を目論む存在です。遥か昔、勇者に倒されたはずが、3年前に蘇ってしまったのです。」
「のぶ…なが?もしや織田信長公か!?」
「奏太朗、信長公はとうの昔に我らの世で死んだ。同じ名を持つ別人だろう。その魔王とやらが不知火を部下としているのはわかった。それさえわかればもう容易な話だな」
「ああ、容易だな。実に容易な話だ」
「では!」
「ああ、不知火を一人残らず打ち取る。」
「その魔王とやらは知らんが、悪を成すのであれば同罪だ」
こうして奏太朗と重兵衛は異世界にて不知火を追うこととなったのでございます。しかし、彼らの行く道には果てのない苦難が待ち受けていることは知る由もございませんでした。
次回、痕跡。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます