第4話「僕が今、作家を目指してる意味の話」(後編)
僕は所詮二流の煽り屋で、自分の愚かさのせいで、貴重な相方と数億の金を失った。それはそれでいい。それでいいんだけど、その『結果』を受け入れ、一瞬は存在した、「良いことをしてるのに、お金が儲かる世界」の実現に向けて足を踏み出すために、僕は作家にならなきゃいけない。
最初にも書いたけど、昔、VALUというSNSがあって、その中には「クリエーターを証券化する」というサービスが組み込まれていた。支援者は作家から様々な特典を受けられ、目利きが当たればお金も儲かるという素晴らしいサービスだった。僕とDJ君は、作家としても支援者としても、かつてその世界で一番になった事がある。
だけど、VALUは支援者から金を巻き上げることしか考えないクリエーターと、ある一人のユーチューバーの出来心のせいで無茶苦茶になった。今じゃ、SNSそのものが存在しない。その傷を抱え込んでる人は、今でも沢山いる。僕にとっても苦い思い出だ。
昔の事を書くならエンタメとして、かつて同じ夢を見た人たちの気持ちを慰める作品を書こう。そう思った。つまり最初から、敢えて客を限定した訳だ。僕はこれから、【二百人の心を本気で感動させられる作家】を支援しようと思っているのだから、今はこれでいいのだ。
『二百人の人間を本気で感動させ、年一万円を払わせるノウハウ』を確立することは、「良いことをしてるのに、金が儲かる世界」の実現のための橋頭保に、きっとなるはずだ。そのために僕は、これからの半年から一年間を使うつもりだ。
それは、きっと実現できると思う。僕は作家としては素人だけど、煽り屋として、その何百倍、何千倍もの金を市場に投下させてきた。そのノウハウは、きっと無駄にはならない。
『闇人妻の杜』や『片隅を生きる人々』読んでくれた人なら分かると思うけど、「仕手は本当に悪なのか?」というのは、僕の終生のテーマだ。「そうじゃない」と自分を納得させるためにも、僕はこれらの作品を絶対に成功させなきゃいけないと思う。
本当に大事なのは、作品(会社)が本物であるか否かだ。ブームが人為的なものか否かは別に問題じゃない。本物であれば、いずれ誰かに評価されるのだから、「その誰かが僕であって、何の問題があるものか」と思って、僕はずっと仕手をやってきたのだ。
勿論、それが本物だと自分でも信じて……。
相場の世界では、その行為は『悪』だと断罪された。だけど僕は、今でもそれを悪いことだとは思ってない。「悪事を働いたと認識してない人間に罰を与えることに、何か意味があるのか?」と言えば、僕はないと思うけど、とりあえずそれは『結果』として受け止める。僕は別の世界で、同じことをやるだけだ。
また悪だと断罪されるかもしれない。また大事な人を失うかもしれない。だけど、それでも僕はやる。人は幸せになるために生きるものであり、その権利はたとえ国家であろうと奪えないものだ。自分が正しいと思う事を曲げて、他人から評価されたり、金を残したところで一体何になるだろう?
僕はこういう人間で、僕の小説の中にはそういう人間たちが、沢山出てくる。立場は違えど、自分の主義信条を曲げない人たちばかりだ。だけど本当に大事なのは、主義信条ではなく、敵味方という立場でもなく、心からそれを信じ、絶対に曲げないという【生き方】だ。
だから、僕の小説を面白いと思うなら、貴方の中にもそういう部分があるという事であり、僕の作品を支援するということは、僕の【生き方】を支援することと同じだ。勿論、僕はそれを歓迎する。別に仕手を肯定する必要はないし、家族持ちの金でも受け入れるけど、【生き方】を否定する奴とは手は組めない。
生き方が一緒なら、納得は出来なくても、相手が何故そういう行動をとるのか、理解は出来る。生き方が一緒で、価値観も一緒なら、最高だ。そういう人間だけをこれから集めていきたい。行動力はあっても主義信条がない奴、あってもすぐに曲げる奴が、この世では一番怖い。何をしでかすか分からないからだ。
僕はよくキチガイ扱いされるけど、僕に言わせれば、そういう人間の方がよっぽどキチガイだ。何が楽しくて生きてるのか全く分からないし、自分を縛るルールもなくて、どうして『良い悪い』が決められるんだろう? 僕は別に、ルールを否定してるんじゃない。自分でそれを決めたいだけだ。
普通の人は、損か得かで行動を決めるけど、人間の幸福は、その『損得』とは無縁のところにある。より正確に言えば、積極的に『損』を取りに行くことにこそ、【人生の愉悦】みたいなものはある。ずっと相場の世界で生きてきて、僕はそのことだけは確信してる。勿論、理解しろとは言わない。
普通の人には信じがたいだろうけど、「お前らと一緒に『得』をするくらいなら、自分一人で『損』をした方が遥かにマシだ!」という人間が、確かに存在するのだ。僕はそういう人間が大好きで、そう言う人間だけを本音では集めたい。社会を変えられるのは、そういうタイプの人間だけだと、本気で信じているからだ。
今の社会の中で幸せになれない人は、一般的には【非リア】と呼ばれる。だけど僕は、非リアとは決して負け組を意味するのではなく、しっかりとした主義信条を持った人間が、自らの意思で選び取る【生き方】を意味する言葉だと思ってる。少なくとも僕は、そういう気持ちでその言葉を使って来た。
「自分がいいと思うものは、誰がなんと言おうと価値がある」
その気持ちを貫ける奴が居なけりゃ、世の中はどんどんダメになる。賢い奴に飼われるだけの家畜になる。それが幸せっていうのなら、それは別に構わないけど、そんな奴らと同じ空気を吸いたくない。
「カクヨムみたいな真面目な場所で、こんなことを書いて、何の得があるのか?」と思うなら、貴方は多分【正常】な人だ。勿論、得なんてない。
だけど、大多数の人に認められるのではなく、「二百人の人間を、心底感動させ」、「良いことをしてるのに、金が儲かる世界」への橋頭保を築くためには、この文章を書くことが絶対に必要なのだ。
「自分の言動に意味があるか否か?」という点に限ってみれば、僕は損得にシビアな男である。今はまったく意味をなさないような言葉でも、後になって振り返ってみたとき、重要な布石であったり、伏線であったりすることがよくある。その【面白さ】を知ってる人間たちが、今の僕を支えてくれている。
もし、僕の言葉に何か引っかかるものがあって、別の世界の一端を覗いてみたいと思うなら、是非とも「闇人妻」や「片隅」の本編を読み、お気持ちでもいいから支援してみて欲しい。少し人生を踏み外すかもしれないが、今ならまだ、最初の二百人の中に入れるからだ。
『僕が今、闇人妻を書いている意味のお話』(おしまい)
闇人妻の杜—並行世界のユキとソラ—(現在公開停止中)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054897521465
片隅に生きる人々
https://kakuyomu.jp/works/1177354054903081361
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