オンラインゲームの受付嬢に恋をしてしまった話。
@YOanimelove
好きになったあの子はモブでした。
その子はいくら話しかけても同じ答えしかくれなかった。
「今日、予定ありますか……?」
「受注できるクエストはご覧の通りです。」
ゲームの中で僕は、《受付嬢に恋をした》。
大流行しているオンラインRPG。最新のVR技術が使われているとかで色々なメディアでも取り上げられていた。
僕はそのゲーム自体に興味があった訳じゃなく、友達がみんなやっているのを見て、流されるように始めただけだ。ゲーム自体、そんなにやったことがなく、何をすればいいのか分からないまま、ただひたすら、クエストをこなしていた。
そんなある日、ゲームのアップデートが入った。
内容は第一の村の受付嬢を男性から女性に変えるというものだった。プレイヤー全員が唖然とした。
ゲームが配信されてから約二か月。ほとんどのプレイヤーが第一の村になんて残っていなかった。ネットでもくだらないアップデートだと話題になっていた。
しかし、まだろくにゲームを進められていなかった僕はちょっとだけ興味があった。
まだ第一の村のクエストを消化できていなかった僕は受付嬢の顔を拝みに村に向かった。
「ようこそ、第一の村へ。あなたが受注できるクエストご覧の通りです。」
黒髪ボブで、身長は一六〇と少し。大きくはないが、柔らかく膨らんだ胸。モブとは思えないほどの端正な顔立ち。完全に僕の心はぎゅっと掴まれてしまった。
「あの、お名前はなんですか……?」
「クエストを受注しますか?」
何度話しかけても彼女は同じ言葉しか喋らなかった。違う言葉も試した。
「今日はいい天気ですね!」
「……」
「好きな食べ物はありますか?」
「……」
彼女は僕の言葉には反応してくれなかった。彼女と僕の接点はクエストのみだった。
ひたすら彼女に話しかけて、クエストを受け続け、ついに最後のクエストとなった。
そのクエスト名は『あの子からのプレゼント』
クエストの内容はそんなに難しいものはなかった。指定されたポイントにある花を摘んで変えるというものだった。
クエストを終え、報酬欄を見てみると、《ダリアのブーケ》が入手されていた。
クエストから帰還すると、彼女との会話コマンドに『話す』というキーが追加されていた。
そのボタンを押すと、彼女が口を開き始めた。
「その花束を受け取ってください。私からの感謝です。」
そう言い放つと、またいつもの受付嬢に戻ってしまった。おそらく、クエストの仕様だったのだろう。これも彼女のプログラムだったのだ。
これで会うのは最後か、と思いながら彼女に軽くお辞儀をし、村の出口に向かおうとした時。
「……好きな食べ物はチョコケーキです。」
その瞬間、手に持っていたダリアが白く輝いた気がした。
僕が受付嬢からもらった最初で最後のプレゼント。
白いダリアの花言葉は『感謝』。
オンラインゲームの受付嬢に恋をしてしまった話。 @YOanimelove
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