精霊装着
突如、光に包まれたと思ったら自分の右手の甲に、大盾を模した紋様が刻まれていて動揺するカリン。刻まれた紋様をジッと眺めて呆然と立ち尽くす。
「これは……
「精霊紋……?」
カリンは聞き慣れない単語に首を傾げる。ファナはカリンの右手の甲にある精霊紋をジッと見つめながら説明を始める。
「精霊と契約を交わした時に刻まれる紋様の事よ。つまり、カリンちゃんは本当にヘカーテさんの主になったの。ついでに言うなら、これでヘカーテさんが精霊である事も証明されたわね」
ファナの説明にカリンは驚愕する。まぁ、これだけ不思議な事が起きたら、ヘカーテが精霊だというのはほぼ間違いないというのは頭で理解しているが、まさか自分が精霊と契約を交わして主になるとは未だに信じ難い出来事である。
「それだけではありませんよ。ご主人様。早速『
ヘカーテが興奮気味にそう言うので、カリンは動揺しながらも、一度深呼吸をして言われた通りの言葉を発する。
『精霊装着!暴食の大盾ヘカーテ!』
すると、カリンの右手の精霊紋と、ヘカーテが光を放ち、思わずカリンは目を瞑る。光はすぐに収まり、カリンが恐る恐る目を開くと
「えっ!?何!?コレ!!?」
カリンの右手に白に近い銀色の大盾が握られていた。更に、その大盾の真ん中には巨大な真紅の球体がはめ込まれている。突然手に入れた事がない大盾を持ってる事にカリンは動揺していると
『どうです!ご主人様!私の大盾は!?』
「えっ?大盾が喋ったあぁぁぁ!!?」
今度はその大盾から声が聞こえてきた事に動揺するカリン。カリンは大盾を手放そうとするが、何故か手から離す事が出来ない大盾に、カリンの動揺はますます深くなる。
『落ち着いてください。ご主人様。私ですよ。私』
「えっ……もしかして……ヘカーテさん……?」
カリンが恐る恐る大盾に尋ねれば、大盾から肯定の返事が返ってくる。カリンが冷静になって辺りを見てみると、ヘカーテはこの部屋のどこにもいない。それでも、ヘカーテの声は自分の握っている大盾から聞こえてくる。そこから考えられる答えはただ一つ。
「ヘカーテさんが……この大盾になったって事……?」
「武具の精霊は、精霊装者の武器となって戦う。噂で聞いた通りみたいね」
ファナが言う噂は確かにカリンも聞いた事がある。しかし、色々な事が起こりすぎてカリンは未だに自分の状況が理解出来ない。それに
「あの……ヘカーテさんを手にしても私のステータス未だに0なんですけど……」
カリンのHPとMP以外の数字は未だに0のままである。せっかくヘカーテと契約したのに、自分がこんなステータスなので申し訳なくなってしまう。
『問題ありませんよ。ご主人様。私がいれば解決しますので』
「えっ?」
『百聞は一見に如かず。まずは私の能力をお見せする為に魔物がいる場所へ向かいましょう!』
「えっ!?うわぁ!?ちょっ!?待って!?引っ張らないでぇ〜!!?」
カリンは大盾に引きずられるような感覚で部屋を出た。カリン達が部屋を退室したのを苦笑を浮かべ見送っていたファナは
「良かった。なんとか間に合ってくれて……」
と、誰もいない部屋でそう呟いた。
暴食の大盾使い 風間 シンヤ @kazamasinya
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