お母さんは女王様

 死ぬと思ったその時女性の声がして、ふと気づくと目の前でジェネラルウルフが地面に倒れ伏していた。


 何が起こったのだろうか…急な展開に頭が追いつかない。今日はずっと同じことを言っている気がする。


 現状把握をする為に、女性の声がした方向に振り替えると


 そこには、ニコニコと笑顔を浮かべたリリスさんが居た。


----------


「えーっと、リリスさんはどうしてここに?」


 リリスさんがこの場に現れてからしばらく経った。アーミーウルフとジェネラルウルフの素材をはぎ取ったり、僕以外の二人が落ち着くのを待ってから改めてリリスさんが何故居るのかを質問する。


「いえー、宿屋の再開の準備をしてたのですが、なんとなく嫌な予感がしましてぇ」


「なんとなく…ですか?」


「はい、なんとなくです~」


「それで、ジェネラルウルフはどうやって…?」


「声でこう……えいっ!てやりました~」


 両手を前に突き出して「えいっ!」とやるリリスさん。美人がこういうことやってると無条件に可愛く見えてくるな。


 それにしても、なんとなく嫌な予感がして、ピンポイントで僕たちの所にたどり着いてあまつさえ、ジェネラルウルフを声だけで倒す?

 リリスさんは何者なんだ…?


「リーンさん、お母さんはお父さんと結婚する前は冒険者だったんです」


「リリスさんが冒険者…?」


「はい、お母さんは女王バシリッサというジョブ兼二つ名で、A級冒険者だったんです」


「「A級冒険者!?」」


 僕とキリーは同時に声を上げた。まさかリリスさんが冒険者、しかもA級だとは思ってもみなかった。


 A級といえば、一つの国に5人いればいい方で一人で小国の軍隊に匹敵すると言われている。文句なしに人類最強の一角だ。


「はい、ひと昔前ですけどねぇ~。さっき声はスキル「女王様クイン命令ハウリング」ですね~」


 なるほど、ジェネラルウルフを倒した時の声はスキルだったのか。声だけで倒せた仕組みに納得していると、キリーが女王バシリッサの名前に反応して、ビクビクしながら口を開いた。


「き、聞いたことがあります、女王バシリッサのリリスといえば、鞭を使い多数の敵を同時に屠り大量の死体の山を築きながらも常にニコニコ笑顔でいる。ドSという概念を具現化したらリリスになる、と言われていた人だと…」


「あらぁ、良く知ってますねぇ」


「ひぅっ!」


 リリスさんはそう言うと、キリーににっこりと微笑みかけた。かなりの笑顔ではあるが、目が笑っていない。あれは、獲物を射殺す目だ。

 キリーもそれを感じ取ったのか、小さく悲鳴を上げると僕の後ろへと隠れてしまった。小動物みたいなその行動に僕は萌えを感じていた。


 それにしても、ドSを具現化したらリリスさんになる。か、あながち間違いじゃn…かはっ!!


「あらあら、リーンくんは学ばないですねぇ~」


 気付いたらみぞおちに衝撃を感じて、地面に倒れ伏していた。全く見えなかった。

 なるほど。A級冒険者と聞いてこの動きのスピードとキレに納得がいった。そしてドSというこtぐふっ!


 今度は頭を強く踏まれたようだ。キリーが僕の現状の惨劇に顔を青ざめ距離を取り、シリスは羨ましそうに指を咥えて眺めている。


 なんだろう。たくさんの女性、それも飛び切りの美女美少女が集まっているのに全くもって嬉しくない。どんどんとカオスに近づいている気がして仕方が無かった。


 とりあえず


 余計な事は言わない、考えないことにしよう。つくづくそう思った。 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハーレムを作る為、冒険者を目指したがどんどん周りがカオスになっていく。 ライマイ @raimai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ