上見て下見て前を見て
終電間近、早足ぎみに大坂の難波を歩いていた時、今流行りのパリピ芸人を思わせる調子のいい声が降ってきた。
「お姉さん下見て何か嫌なことあったのー?上見て歩こうぜ!」
思わずハッと顔を上げると、
その声の主は流れる人並みの中にお姫様を探しているホストであった。
ホストのキャッチは風営法や迷惑防止条例により違法行為とされることが多いようだが、
この時ばかりは思わずふふっと笑ってしまった。
勧誘はされず、私に対して放った言葉はその一言だけであったが、たまにこの時の出来事を思い出すことがある。
名曲、「上を向いて歩こう」があるように、下を向かずに…といった意味合いの言葉をよく見かけるが、上を向いてばかりなのもいかがかと思う。
上を向いて歩き続けていると、犬のウンチを踏んだことに気づかず歩み続けてしまうかもしれない。
そうなると、べったりとくっついてしまい汚れを落とすのは大変になるだろう。
また靴下が解けたとしても気付くことはできないだろう。
そのうち解けた靴紐を踏んで転んでしまうかもしれない。
まさしく、足元を掬われるのだ。
では、下を向いて歩いたらどうなるのか。
下を向いて歩き続ければ人にぶつかるし、空に虹がかかっていても気づけない。
困っているお年寄りや道に迷っている外国人観光客の存在に気づかずスルーしてしまえば、薄情者と白い目で見られるだろう。
だが、どちらも悪いことばかりではない。
上を向いていたら空に虹がかかった時に一早く気づいて周りに「虹だよ」と教えてあげられる。
雨が降りそうだな、と予感して傘を買うという対策ができる。
反対に、下を向いていたら、四つ葉のクローバーが見つかるかもしれない。
前を歩く人が目の前でハンカチを落とせば、拾ってあげられるかもしれない。
要は、いい塩梅で歩くことなのだ。
上を見て、下を見て、たまに前を見据えて目先に伸びる道がどこへ続いているのか確認をする。
首の稼働領域の広がりは人生の広がりだ。
上見て下見て前を見て、あ、少し先にカフェが。
最近ゆっくりコーヒーを飲むこともできてないな。
久しぶりにコーヒーでも飲もう。
ゆっくり腰をかけて、少し休もう。
目がシュパシュパする 水縞 @ojoo820
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。目がシュパシュパするの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
飯!メシ!めし!最新/鴻上ヒロ
★6 エッセイ・ノンフィクション 連載中 4話
不文集/石嶺 経
★127 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1,131話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます