意地悪なカレーピラフ…

宇佐美真里

意地悪なカレーピラフ…

ランチタイム。

少し前に炊飯器で炊きあがったピラフに、カノジョがフライパンでカレー粉を塗していると、カップボードから大皿をふたつ取り出しながらカレが訊いた。

「ドライカレーとカレーピラフって何か違うの?」

「それ…前にも話したコトあるじゃん」

「そうだっけ…」とカレは舌を出す。

そういえば、カレーピラフを食べるのは久し振りのような気がする。


ドライカレーとは汁気のないカレーのコト。

ドライカレーはどうやら日本オリジナルのメニューらしい。まぁ、要するにカレーライスのバリエーションだ。カレー風味の炒飯のコトもドライカレーと云う。

対してカレーピラフとは、そもそもスープで炊き込んで作ったピラフにカレーの味付けをしたモノ。若しくは初めからカレー粉を入れて炊き込んだモノ。

喫茶店などでナポリタンなどと共に定番メニューとされる所謂"ピラフ"のほとんどは炒めているので本来は"ピラフ"ではない…。どちらかと云えば、洋風"炒飯"というコトだ。


そう、改めてカノジョが説明した後にカレは言った。

「喫茶店のピラフってナンで、あんなに美味しく感じるンだろうネ」

カノジョは炊き込んだ"ピラフ"にカレー粉を塗していた。カレーピラフを作っている。


「カレー"炒飯"の方がいい???」"炒飯"を強調してカノジョが訊く。

慌ててカレは答えた。「いや、カレー"ピラフが"いいですネ」


「子供の頃はさ…ドライカレーを食べるトキにいつも『ナンでレーズン入れるンだろ…』って思ってたンだ…。アレって要らなくない???」

カレは"ドライカレー"を食べる度に子供の頃の話をする。

そしてカノジョも毎回同じように言う。

「甘味を足して…カレーの味を際立たせるためだろうケドね…ワタシも嫌い。必要ないよネ。…って、今日はカレー"ピラフ"だし、入れてないから…レーズン」

むしろドライカレーだったとしても、カノジョは一度もレーズンを入れたコトはなかった。


カレー色に染まった"ピラフ"を二つの皿に盛り付ける。

少しだけ多めに盛られた皿はカレのモノだ。

盛り付けながらカノジョはふと思う…。


『このヒト…悪気はないンだろうケド、ワタシの話をいつもキチンと聞いてるのかしら…』


ちょっと…ちょっとだけ面白くなく感じたカノジョは、あるモノを冷蔵庫から取り出して、いつもよりも多めに掛けてみた…。


「はい、どうぞ」

キッチンカウンターに出した皿をカレがテーブルに運ぶ。

椅子に座り「いただきます」と手を合わせ、ランチが開始される。


スプーン山盛りのピラフを口に運ぶカレ。

「う~ん。ピリッとした辛さと酸味がカレーを引き立てていて旨いネ」


意地悪でいつもよりも…ほんのちょっぴり多めに入れたタバスコ。

そうとは知らず、満足げにピラフを頬張るカレ。

そんなカレをカノジョは笑いながらみつめた。


ピリリといつもより辛味を効かせた、ちょっと意地悪な…カレーピラフ。



-了-

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