第23話 世界を終わらす事さえ


 僕が地面に彼らを下ろすと、恐怖に満ちた顔で村から逃げる様に出ていった。

 多分何をされたかわからないのだろう……一切反撃する事なく逃走した。


 僕は彼らを黙って見送った後、無駄だとわかっているが、一応ジェシカにきっちり注意をした。


 いくら相手が喧嘩腰でも、煽る様な事は駄目だって。


 「ハイハイ気を付けるわ、それより私の言ってた事わかった? あんたの魔法の力がどれ程なのか」

 ……と、これである……全然反省の色が全く無い……。


 先が思いやられる……これでは、こんな喧嘩腰ではいつか命を……。


 僕はジェシカのあの目が忘れられなかった。

 大剣を振り落とされる瞬間のあの目……あの全てを諦めてしまった様な目が……僕は忘れられなかった。

 まるで、僕に見せつける為に、僕に何かをさせる為に、自らの命を落とそうとした様な、そんな目。

 僕は危ういと思った、ジェシカが怖くなった。


 だから……僕は決めた……ジェシカを……守るって、彼女を死なせないって。

 大事な人だから……僕にとって大事なって……、ち、違うよ? 恋とかじゃない、そうジェシカはスポンサー、金(ゴールド)を出して貰った大事なスポンサーって意味だから、そうこれは仕事……仕事なんだ。


 なんだかんだ言って村は出来つつある。

 メインの家、3人が住む予定のメインの家の材木作りは終わり、後は組むだけ。

 近くの沢から水を引き、リン君のお店、宿屋と……まだまだ先は長いけど。


「ほらボケっとしてないで、リン! とりあえず今日は休みなさい」


「あ、はい……」


「あ、えっとリン君……」


「あ、大丈夫です! さっきジェシカ様に聞きました。ヨーク様の魔法は他言しません! って言うか……良くわかっていないんですけど」

 そう言ってあはははと笑う……魔法、特に隠している魔法に関して詳しく聞かないのが礼儀……ある程度はわかっているのだろう……。

 

「うん……ありがとう」

 そう言うとリン君は「えへへへ」と笑った。

 まるで女の子の様に可愛く笑うと、「少し休みます」と言ってテントの中に入って行った。


「話は終わった? じゃあ次は応用よ、バカの一つ覚えで浮かべるだけだと行き詰まるわよ」


「いや、家作りさせてよ」


「家の基礎、土台作りに応用出来るわよ?」


「土台?」


「そう杭を埋め込む、石を埋める、圧力をかけ石を割る、全部あんたの魔法で出来るじゃない」


「応用って……今度は圧力でもかけろって事?」

 今までは0重力、つまり無重力状態、無重量状態を作り出していた。

 でもジェシカは逆をしろ、プラス重力過重量状態にしろって言っている。


「それだけじゃない、あんたの魔法はとんでもなく応用が効く、頭を使えば何だって出来るわ……」


「な、何だって?」


「そう、何だって出来る、この世の、この世界の法則だって変えられる……ううん……この世を終わらす事さえ……」


「この世を……」

 ジェシカはそう言い僕を見つめている。思い詰めた様な顔で……僕をじっと見つめ続けていた。

 



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パーティーから追放された職業ポーターの僕、実は隠していた力、重力を操る魔法を謎の金髪美少女にバレ何故か最強を目指す事になる。 新名天生 @Niinaamesyou

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