第21話 魔法の範囲と効果
「あああ、また駄目だ」
上手くいかない……何度やっても……。
「あんた基本的な事がわかってないわね」
「……基本?」
「まあ、そうか……一つの魔法しか使えないんじゃね」
ジェシカはいつもの様に自分のテントの前に座って、つまらなさそうに僕の魔法を見ながらそう呟いた。
「ど、どうせ僕が出来る事なんてこれだけだよ」
「……それだけ、本当にわかってないのね、バカみたい……」
「ど、どうせ……バカだよ」
「あのね……魔法効果範囲内では魔法は無効になるのよ」
そんな事も知らないのかとばかりにジェシカはため息混じりにそう言った。
「え?」
「それは同一魔法でも一緒、つまり極端な話、同じ魔法でも同じ力でも、先に魔法をかけた者が勝つの」
「え? そうなの?」
で、でも魔法同士の衝突なんてよくある。
「ただし範囲の中だけね、設定範囲外から出れば、避ければその効果は無くなる」
「避ければ……」
「あんたの魔法は捕らえればもうそれで勝ちは決定、空中で逃れるには何かしらの反動が必要、さっきも言ったけど魔法効果範囲内で魔法は使えない、あんたの重力魔法で浮かばされたら、空中に足場を作るか、魔法範囲外から押し出すしか無い」
「いや、僕は戦闘は想定していないっていうか、それと複数を同時に浮かべるのと、どう違……そ、そうか」
「……同じ事よ」
「重なってるって事か……」
「岩を動かす時の失敗もほぼそれね、石は小さいから魔法範囲は狭いけど、複数個だと逆に重なりやすい、重なれば魔法は衝突して消滅する」
◈
怖い……パーティー3人から攻撃されたら……空中に浮いている3人が僕を殺しにかかっている。
「でも……それ以上に……」
僕は怒っていた、ジェシカを殺そうとしたこの男に、僕は自分が殺される以上に怖かった。仲間が、大事な人が殺されるという事に。
魔法使いらしき奴が詠唱を始める。
でも、僕は信じる……ジェシカの言葉を……。
「あきらめてください、あなた方は何も出来ません」
「うるせえ、早くしろ!」
「今、完了した、食らえ!」
魔法使いはそう言って僕に手のひらを向けた………………がやっぱり何も出ない。
「あははははは、ど素人ばっかりね」
僕の後ろでジェシカが高らかに笑う。
「な、何でだ、何故何も出来ない? 一体なんなんなの!」
「ど、どうした 早くしろ!」
「出来ない、出来ないのよ!」
「おい、回復魔法も無理か?」
「…………全然……無理」
「ど、どうなってやがんだ!」
3人は空中で必死にもがいているだけ、僕に攻撃は一切できない。
僕はジェシカに言われた言葉をまた思い出す。
『あんたの魔法は相手はなにもさせる事無く勝てる……最強の魔法、最強の地の魔法』
僕の魔法……僕の最強の魔法……。
「う、うわああああああ!」
僕は3人を天高く舞い上げる。
木よりも高く……遥か上まで持ち上げた。
「参った! 降参する! 俺たちが悪かった!!」
その大男の言葉は、僕が非戦闘員から戦闘員に変わった瞬間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます